ゲームは「商品」であり「文化財」でもある。

皆さんは「ゲーム」という言葉から何を連想しますか?人々が余暇に楽しむちょっとした遊びから、知恵を絞って取り組む複雑なもの、手先を使って器用に何かを動かすものから、言葉を使った遊びなど、人々は時代や場所を問わず様々な「ゲーム」を発明し、遊んできました。日本の電子ゲームもそうした豊かな文化の結晶の一つです。

しかしながら、日本ではまだ、70年代以降の電子ゲームをある程度体系的に、偏りなく収集研究し、それら資料を適切な形で保存保管するために自由に研究ができる場所が少なく、広く一般に過去の作品をきちんとした形で紹介するチャンスもごくわずかです。また残念なことに、日本が海外に誇る一大文化コンテンツであるはずのゲームは、資料自体の劣化が人々の予想以上に速く、非常に脆い性質のものであることが多いのです。このまま年月が経過すれば、現代文化の大きな一翼を担っているにも関わらず、これまでの電子ゲーム及びその関連機器・資料等の歴史、全体像やその受容のされ方を、未来へと継承していくことが困難なってしまうおそれがあります。私たちゲーム保存協会は、この危機に立ち向かい、少しでも多くの貴重な電子ゲームを後世に残すべく活動をしています。

国内の電子ゲームに関する研究状況遅滞の原因は多々考えられますが、特に、多くの人にとってゲームは未だ「商品」であり「文化財」として認められにくいこと、70年代以降活躍したゲーム製作会社、知識を持つ人やゲーム資料そのものが散逸してしまっていること、多くのゲームが極端に劣化しやすく、特殊な技術がなければ復元保存が出来ないこと、といった問題が挙げられます。そこで私たちゲーム保存協会は、ゲームに対する意識普及のための活動、保存や保管技術に関する研究活動、資料の実際の保存活動といった様々な方面から、ゲーム文化保存のための取組みを続けています。

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一般の人々に電子ゲーム及びその関連機器・資料等を保存することの大切さを積極的に啓発していきます。

2
保存価値のある情報を査定、収集、
整理、保存、管理し、閲覧できるよう
整える専門職、いわゆるアーキビストの間におけるネットワークの構築を
急ぎ、散逸する資料の収集や
情報共有を行います。
3
収集した資料の保存のために、
最新特殊技術を用い、文化財として
後世の研究に堪えうるクオリティを
持った資料のデジタル
リマスタリング作業を進めます。
4
特定のハードウェアやOS向けに開発されたソフトウェアを、設計の異なる他のハードウェアやOS上で実行させる、いわゆるエミュレーション等の開発も合わせて行い、未来に文化資料を残すための取組みを続けて行きます。

その昔、人々に親しまれていた浮世絵は、国内において文化財として認められなかったが故に海外に散逸し、今ではその多くが海外のコレクターの所蔵品になっています。今、ゲームも同じ道を辿ろうとしており、またそれは浮世絵よりもさらに厳しい状況にあります。浮世絵は海外で丁寧に保存保管され、今日、各国で開催される展覧会に美術品として貸し出されるなど、文化資料として有意義な活用が為されていますが、ゲームに関しては、どれほど丁寧に保管していても、特殊な技術で保存の研究を行い、それぞれのゲームに最適な保管方法で安置していなければ、あっという間に中に入っているデータやメカニズムが劣化により壊れてしまうのです。
既に日本独自のゲーム文化に関心を持つ海外コレクターにより一部資料は海を渡っており、心あるコレクターは保存のための研究に力を注ぐでしょう。しかし、日本独自の技術が詰まった特殊な資料の保存活動が海外で完璧に出来るとは限りません。私たちのゲームは、私たちが研究して残さねばならないのです。

ゲーム文化保存の意識をより多くの人と共有し、1個でも多くの資料を次の世代に残せるように、出来ることからやって行きたいのです。そのために、まずはこの文章を読むあなたに、ゲーム保存に対する関心と好奇心をもってもらえればと思います。