文化庁のメディア芸術アーカイブ推進支援事業について

文化庁のメディア芸術アーカイブ推進支援事業は、ゲームを含むメディア芸術作品の制作や保存、教育・研究を行う国内の団体を対象に、作品の保存や活用に関わる事業を助成するものです。NPO法人ゲーム保存協会は、2017年より助成を受け、活動しています。

日本の優れたメディア芸術作品や関連資料の整理や保存・修復、デジタル化などを進め、「文化庁メディア芸術データベース」として公開し、今後のメディア芸術振興に繋げるこの取り組みですが、ゲームについては実際の資料を保管する専門団体がまだまだ少なく、信ぴょう性の高いデータベース作成のため、ゲーム保存協会が順次、情報の整理や入力を続けています。

文化庁メディア芸術データベース(β版):https://mediaarts-db.bunka.go.jp/

現在公開されているデータベースには、今後順次ゲーム保存協会が追加した各種情報のアップデートが行われる予定ですが、こちらのページで当協会が担当した作業の詳細や成果を共有しています。

ゲーム保存協会のデジタルアーカイブ事業

文化庁のメディア芸術アーカイブ推進支援事業のために、ゲーム保存協会では以下のような手順で情報を精査しまとめています。80年代の豊かなゲーム文化を未来に伝えるため、現在も対象資料の範囲を広げながら作業を続けていますが、アーキビストとして資料の正しい情報を明確なカタログとしてまとめる作業は、一般に想像するよりも多くの手間と集中力を要する作業です。

専用ページ:アーキビストの仕事(カタログ編)
専用ページ:事業を支えるお金のお話

手間のかかるカタログ化作業を経て作られたデータベースは、ゲームの歴史を探る研究者や、黄金期のゲームからインスピレーションを得たいクリエイターらにとって、便利で強力なツールとなります。

このページでは、文化庁助成事業の実際の成果であるデータベースと、それに係った実際の費用について公表しています。


ゲームデータベースプロジェクト(公式ゲームカタログ)

① 2017年度(平成29年9月~平成30年3月)

ゲーム保存協会が保管する日本電気(NEC)のPC-8001シリーズ用ソフトとPC-8801シリーズ用ソフト(以下PC-8×01)を手作業で資料確認し、1,500件以上のソフト情報を登録。これは、過去発売されたPC-8×01用ゲームソフトのうち5割以上を網羅するもので、ソフトの存在が疑われるもの、団体内に現物資料がない作品については、信ぴょう性を保証できないため登録から省いている。

2017年時点で公開されていたβ版メディア芸術データベース上には、PC-8×01用ゲームソフト1,629件が登録されていたが、うち396件は作品の現存が確認できない未発売ソフトや教育用ソフト等の可能性があることを指摘。

ゲーム保存協会では実際に存在が確認できた1,233件のうち788件について、協会が所蔵する現物資料と照らし合わせ、詳細情報の追加を行っている。また、その他の723件は2017年時点のメディア芸術データベースに登録が確認できないもののゲーム保存協会が所蔵していた資料で、新規の登録となった。

なお、助成受給初年度となるこの年は、文化庁の事業としてはデスクリプションの作成と提出用カタログの整理のみを行い、整理する前の情報登録の総数で言えば3,000件以上の登録を行っている。


資料閲覧:2017年度・助成事業実施報告書
資料閲覧:2017年度・対象ソフト一覧


② 2018年度(平成30年8月~平成31年3月)

実際のソフトを一つずつ確認し、登録数1,500件以上、これまでに発売されたシャープのX68000用ゲームソフトのうち6割ほどを網羅したデータベースとなった。シャープのX1シリーズはこれまでに発売されたもののうち4割ほど、シャープのMZシリーズでは発売総数のうち3割ほどを網羅している。

また、富士通FMシリーズ(FM TOWNS以外)では、発売されたゲームソフト総数のうち2割ほどを網羅。なお、2018年度も前年度と同じく、何らかの形でソフトの存在が疑われるものや、団体内に現物資料がない作品については、信ぴょう性が保証できないため入力されていない。

2018年時点のメディア芸術データベースにはこれらソフトの登録はなかったため、新規の追加情報登録となった。

2年目のこの年は2017年度と同様にディスクリプションと提出用カタログの整理を行い、そこに加えて1,500枚以上のソフトパッケージのデジタル化、画像データの解析とタグ付けも行っている。


資料閲覧:2018年度・助成事業実施報告書
資料閲覧:2018年度・対象ソフト一覧


③ 2019年度(令和1年6月~令和2年3月)

MSXシリーズのソフト原本及び日本電気(NEC)のPC-6001シリーズのソフト計1,200本以上を精査。さらにこれまで調査が難しかった通信販売専用ソフトおよび自動販売機型ソフト販売機(TAKERU)のソフトについて、情報を登録。特に通販専用ソフトに関しては雑誌『I/O』のテープサービス掲載情報の全情報を網羅しているほか、『ソフトメディア』や『ザ・ソフト・バンク』といった資料から49,000件以上の情報を登録、複数回繰り返し掲載されているものがあるので、タイトル数としては700本以上の作品が確認できた。ソフト・ベンダーTAKERUの専用ソフトは、ブラザー工業のカタログから調査しているが、現存資料数が少なく、2,000件程の登録となった。

今年度、事業予算を拡大して取り組むことができたため、これまでにない収蔵資料のパッケージ内情報についても登録を行った。2017年度アーカイブ事業で整理したPC-8×01用ゲームソフトのマニュアルやそのほかの資料のインデックス化からはじめ、ソフトに付随するマニュアルやユーザーハガキといった各アイテムの詳細情報を登録。8,500件以上の登録情報、ソフト数では1,400本以上のタイトルについて資料情報の追加を行った。

2018年度に引き続き、パッケージ部分のデジタル化や画像データの解析とタグ付けも進めており、デジタルスキャンが完了した資料数は991点、スキャン画像数1,100枚以上。2019年度は紙箱型パッケージを専属のスタッフが丁寧に分解しクリーニングする作業もはじめており、事業予算の拡大に伴い資料準備に時間のかかるカタログ化やデジタル化を集中して進めることができた。


資料閲覧:2019年度・助成事業実施報告書
資料閲覧:2019年度・対象ソフト一覧
資料閲覧:2019年度・通販ソフト一覧


リンク:

アーキビストの仕事(カタログ編)
事業を支えるお金のお話

文化庁メディア芸術データベース(β版)
文化庁・メディア芸術の振興