2015年度特別講演・WEB展示会
エニックスの黎明期展
(The Dawn of Enix)
第1回ゲームホビープログラムコンテスト
株式会社エニックス(現、株式会社スクウェア・エニックス)は日本のパソコンゲームソフトウェア産業において初期から注目された企業であった。1982年に一般パソコンユーザーからのゲーム作品を広く募り、最優秀プログラム賞の100万円を始め、賞金総額300万円の「第一回ゲーム・ホビープログラムコンテスト」を開催したのである。
当時、同様の公募コンテストは他にも多数あったのだが、エニックスのコンテストが他と異なっていたのは入選以上の13作品を全て市販パッケージとして流通させ、販売本数に応じた印税を支払った点にある。またこのパッケージも当時はカセットテープサイズのケースが主流であったところ、それぞれ独自のイラストが描かれた大きな紙箱であり、統一されたデザインと共にエニックスのブランドの確立に貢献した。
第一回コンテストは1982年12月20日に締め切られ、翌1983年2月中旬に13作品が一斉に発売されている。特筆すべきは中村光一氏の「ドア・ドア」と、堀井雄二氏の「ラブマッチテニス」で、今も続く「ドラゴンクエスト」シリーズの開発関係者ということから知名度も高い。
当コンテストは1984年まで3回開催され、他社の公募コンテストも同時期に終息している。これはゲーム開発規模の拡大と共にアマチュア個人の作品が商業的に成立しづらくなったことと関係しているが、このコンテストからゲーム開発のプロとなった方も多い。最優秀賞の故・森田和朗氏はその後「森田和朗の将棋」をエニックスから発売しており、当時としては強い思考ルーチンとして評価も高く、「森田将棋」はその後も長くシリーズが続いた。ちなみにエニックスの印税制はその後も続いたため、開発者個人が不明になりがちだった業界において、ゲーム内やパッケージなどの著作権表記が当初から明確にされている。
※注意:展覧されている作品は研究用です。パッケージやゲーム画像などの著作権は著作者に帰属します。
私的使用のための複製を除き、著作物の無断複製は著作権侵害になります。
最優秀プログラム賞(賞金100万円)受賞作品
森田のバトルフィールド
モリタノバトルフィールド(Morita no Battle Field)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・最優秀プログラム賞。後に将棋ゲームで知られる故・森田和郎氏(1955~2012年)の作品として名高い。歩兵・戦車・戦闘機・爆撃機を用い、敵と戦いながら敵の首都に歩兵を入城させるまで戦う、ウォー・シミュレーションゲームである。全体としてはボードゲームをコンピュータゲームとして再現したものだが「日本のウォーゲームが、今や世界のトップレベルに達した」などと自信たっぷりなのが凄い。内容には関係ないのだが、ゲーム中やタイトルには「もりたんのBATTLE FIELD」と書かれているのは何故なのか……。
ウォーシミュレーションゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-8801
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:4,800円(税無)
型番:□-101-13-10
作者:森田 和郎 †(もりた かずろう)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811002022004
優秀プログラム賞(賞金50万円)受賞作品
ドア・ドア
ドアドア(Door Door)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・優秀プログラム賞。後のチュンソフト代表・中村光一氏の作品として有名である。ゲームはドアを開けて敵を誘導し、全ての敵を中に閉じ込めることでクリアするという固定画面のアクションもので、後にエニックスのファミコン参入第一弾としてもリリースされた。ゲームホビープログラムコンテストは第3回まで開催されたが、第3回の案内には「ドア・ドア」の印税額が一ヶ月(1984年3月)だけで406万7220円になったことを無闇と強調した欲望丸出しの広告が出されている。
思考型反射ゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-8801
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,800円(税無)
型番:□-102-13-10
作者:中村 光一(なかむら こういち)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001604003
優秀プログラム賞(賞金50万円)受賞作品
マリちゃん危機一髪
マリチャンキキイッパツ(Mari-chan Kiki Ippatsu)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・優秀プログラム賞。君に一目惚れした美人のマリちゃん。嫉妬したその他の男たちがいっそマリちゃんを亡き者にしようと次々に襲ってくる……という、今から見ればとんでもない作品である。当時としては美人に描かれたマリちゃんの絵に対して、「グサッ!」の擬音と共に画面中に鮮血(のつもりの赤い線)が画面一杯に描かれるという演出が当時のパソコン少年に大いにトラウマを残したものであるが、それをパソコンショップの店頭で一日中デモしていたのだから、適当な時代であったことが伺える。一応、15禁(自称)。
野球拳マイコンマンガゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:FUJITSU MICRO 8, FM-7共通
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,600円(税無)
型番:□-103-21-10
作者:槙村 ただし(まきむら ただし)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001990007
入選プログラム優秀賞(賞金10万円)受賞作品
宇宙の戦士
ウチュウノセンシ(Uchū no Senshi)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム優秀賞。「STARSHIP TROOPER」とタイトル画面にあることから、ハインラインの小説に題材を取ったものだろう(小説の邦題はそのまま「宇宙の戦士」であった)。内容はアクションゲームである。当時数々のアクションゲームで有名だったアメリカ産パソコン「アップルⅡ」のゲームへの対抗心が強かったのか「アップルに決してひけを取らない作品」「自分ではアップルに限り無く近づいたと思っています」など、パッケージや広告など、そこらじゅうにアップルを意識したコメントが出てくる。
10種の反射神経型ゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-8801
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,600円(税無)
型番:□-104-13-10
作者:岡田 良行(おかだ よしゆき)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811002008008
入選プログラム優秀賞(賞金10万円)受賞作品
D・I・Sエアポート
ディーアイエスエアポート(D.I.S. Airport)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム優秀賞。航空管制官となって最大16機もの航空機に指示を出し、無事にDIS空港を運営しなくてはならない……というシミュレーションゲーム。「ぼくは航空管制官」シリーズ(テクノブレイン・1998年~)の先駆けとも言える設定で、時代を考えると大変に斬新である。ゲームホビープログラムコンテストで商品化された作品はアクションゲームが多い中、「森田のバトルフィールド」と共に数少ないシミュレーションゲームでもある。
航空管制シミュレーションゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:SHARP X1(要G-RAM)
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,600円(税無)
型番:□-105-36-10
作者:藤原 誠司(ふじわら せいじ)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001915000
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
星子のアドベンチャー
セイコノアドベンチャー(Seiko no Adventure)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。「星子」はセイコと読む(よく間違えられるのだが、ホシコは「エルドラド伝奇」に出てくる女の子である)。「ワタシ セイコ。アルオトコニダマサレテ/ウチュウセンニトジコメラレテイルノ。」という唐突すぎるオープニングが印象的である。アドベンチャーゲームのような体裁だが、「難問・奇問を解いてセイ子を助けて!」とある通り、どちらかというとパズルゲームが連続しているような作りである。しばらく何も入力しないと勝手にゲームオーバーになるなど、今見ると特に独特な要素が多い作品である。
新アドベンチャーゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-8801
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,200円(税無)
型番:□-106-13-10
作者:浅沼 利行(あさぬま としゆき)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001617003
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
地底のモンスター
チテイノモンスター(Chitei no Monster)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。この時期既に古くなりつつあったPC-8001用のゲームとしては唯一入選している。「君は地底探検家です。この地底には財宝をやたらと落として歩くモンスターがいるといわれている。君は財宝を1人じめにするために危険をかえりみず岩を登り、その財宝を探しに行った。」(原文ママ)という適当な説明が一応ゲームの内容を一通り表してはいる。「地底にエレベーターが設置されている」などの妙な要素がいかにも80年代初期らしいが、パッケージイラストにまで律儀に盛り込まれていることに注目したい。
頭脳型反射ゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-8001(要32K), PC-8801対応
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,200円(税無)
型番:□-107-12-10
作者:長谷川 修(はせがわ おさむ)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001616006
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
ラブマッチテニス
ラブマッチテニス(Love Match Tennis)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。「ドラゴンクエスト」で有名な堀井雄二氏の作品である。ゲームはテニスということでアクションゲームなのであるが、「さあ!シェイプアップのためにテニスをしよう。相手はいずれもテニスギャルのかわい子ちゃん」とあり、この頃のゲームとしては珍しくプレイヤーや相手にキャラクター設定がなされており「せんぱいっ! あたし やりますっ! やらせてくださいっ!」などのセリフにスポ根ものの香りを感じる。しかしPC-6001の性能上、「久美子お姉さま」も顔面グラフィックはコケシと大差ない。
テニス反射ゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-6001(要32K)
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:2,800円(税無)
型番:□-108-11-10
作者:堀井 雄二(ほりい ゆうじ)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811000473006
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
ナポレオン
ナポレオン(Napoléon)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。トランプゲームの「ナポレオン」5人プレイをパソコン上に再現した作品。もちろんプレイヤーを除く4人はコンピュータとの対戦となる。「ナポレオン」は日本独自のトランプゲームであり、4~6人のプレイヤーが必須であること、ゲーム当初は全員平等で、途中からナポレオン軍と連合軍に分かれて対戦する形式になる、という独特のシステムからコンピュータゲームとして作られた例は非常に珍しい。パッケージ裏にある作者コメントに「女房にせがまれて作ったものです」というコメントが興味深い。
ナポレオン・トランプゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:NEC PC-6001(要32K)
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:2,800円(税無)
型番:□-109-11-10(印刷ミス有)
作者:島田 弘明(しまだ ひろあき)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001961007
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
暴走オリエント急行
ボウソウオリエントキュウコウ(Bōsō Orient Kyūkō)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。「10キロ先の端が敵に爆破された。客車を切り離し乗客を助けろ!」という、映画をヒントに作られた作品。ヘリコプターから列車に乗り移り、内部に入ると3D視点となる。「スリーパターン反射ゲーム」というのは今見るとよく分からないジャンルの分類だが、アクションゲームが3種類入っていることを示しており、この時期としては凝った構成である。ちなみにパッケージの上の方の目は、ヘリコプターのシーンで襲ってくる「怪鳥」のものらしい。
スリーパターン反射ゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:SHARP MZ-80K/C, MZ-1200共通
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:2,800円(税無)
型番:□-110-31-10
作者:長瀬 敏之(ながせ としゆき)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001618000
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
ピラニア君の一週間
ピラニアクンノイッシュウカン(Pirahna-kun no Isshūkan)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。ジャンルに「海底サバイバルゲーム」とある。淡水魚のピラニアなのに「海へ冒険と繰り出した」というムチャクチャな設定と、妙に情緒的なタイトルが印象的な一本。お腹が空いて死んでしまう前に小魚を食べつつ、サメには食べられないように立ち回るというアクションゲームである。「一週間」というのは、日が進むにつれて小魚の逃げ回る賢さが上がっていくのを強調している。
海底サバイバルゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:SHARP MZ-80B/2000, X1兼用(要G-RAM)
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:2,800円(税無)
型番:□-111-33-10
作者:白井 篤(しらい あつし)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001971006
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
ポーカーエキストラ
ポーカーエキストラ(Poker Extra)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。コンピュータ3人と20回戦のポーカーを行う……のはいいのだが、持ち点が1万ドルを越えると「ロリータちゃん」なる方がショータイムに「特別出演」するのだという。この時期のエニックスのパッケージはゲームの要素を無理矢理全部詰め込んだようなイラストが描かれているのが特徴なのだが、ロリータちゃんの情報はパッケージにも当時の広告にも全く出てこない。日本ゲーム史におけるロリータちゃんの評価は未だ謎である。初期エニックス作品としては最もレアな一本でもある。
ポーカートランプゲーム
発売元:株式会社エニックス
機種:SHARP MZ-80B, MZ-2000共通(要G-RAM I)
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:2,800円(税無)
型番:□-112-32-10
作者:川口 真弘(かわぐち まひろし)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811001977008
入選プログラム賞(賞金10万円)受賞作品
バクテリアエスケープ
バクテリアエスケープ(Bacteria Escape)
エニックス第1回ゲームホビープログラムコンテスト・入選プログラム賞。ビルの中にバクテリア発生。君の使命はバクテリアを避け、各階の病人を救出する事。空気・水・食料を補給しつつ、3D迷路をクリアすることが目的である。作者は後にパックスソフトニカを設立した橋下友茂氏(現:ソフトニカ代表取締役)。「バクテリアエスケープ」の妙にリアルで怖いパッケージ写真は、ソフトニカの過去のWebサイトにある制作関連のトップに掲載されていた。
発売元:株式会社エニックス
機種:FUJITSU FM-7, FM-8共通
ブランド:エニックス(Enix)
媒体:カセットテープ(1個)
発売:1983年2月頃(初版)
定価:3,200円(税無)
型番:□-113-21-10
作者:橋下 友茂(はしした ともしげ)
表紙:さにい・パンセ
ゲーム保存協会カタログID:8811002172006
























特定非営利活動法人ゲーム保存協会