保存録#0003「信じられるのは、誰だ」

今週のショート動画をご覧ください:

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今週で第3回を迎える本シリーズですが、今回はこれまでとは趣の異なる作品をご紹介します。特に、このタイトルに触れたことのない方にとっては、意外な出会いとなるかもしれません。

今週の作品紹介:

パッケージ原本(当協会アーカイブよりスキャン)

スナッチャー
機種:NEC PC-8801mkIISR(フロッピーディスク×5枚)
©1988 コナミ

キャッチフレーズ:「西暦2042年の悪夢。」「ネオ・コウベ・シティに謎の影がしのびよる。」

タイトル画面 — サイバーパンクアドベンチャー、コナミ

1988年にPC-88SR向けに登場したアドベンチャーゲーム『スナッチャー』は、後に『メタルギア』シリーズで世界的な評価を受ける小島秀夫氏が手がけた意欲作だ。
彼にとって初の本格的なストーリー主導のゲームであり、「映画のようなゲームを作りたい」という志向が色濃く反映されている。

ギリアンとミカ — JUNKER本部での最初の仲間たち

セリフの間、カメラワークを思わせる画面切り替え、緊張感を煽る構図など、まるで一本のSF映画を体験しているかのような演出は、当時のアドベンチャーゲームの常識を塗り替えるほど革新的だった。
物語は、人間そっくりの機械生命体「スナッチャー」が暗躍する近未来を舞台に、正体不明の敵と記憶を失った主人公が交差するハードボイルドなサスペンスが展開する。

スナッチャーの内部構造 — 誰が本物の人間なのか?

「誰が本物の人間か分からない」という根源的な不安をテーマにした内容は、現代におけるディープフェイクやAI生成コンテンツによる“偽りの存在”という問題にも通じ、今なお新たな意味を持って語り継がれる。
当時の国産PC市場では、アドベンチャーゲームがシナリオとビジュアルの進化を先導していたが、『スナッチャー』はその中でも突出した完成度を誇る。

ネオンに照らされたネオ・コウベ・シティの街並み

ハードの制約を超えてストーリーテリングと演出の可能性を切り拓いた本作は、国産アドベンチャーゲームの金字塔と称されるにふさわしい。
ブレードランナーなど当時のSF映画からの影響を感じさせる雰囲気も、作品全体の魅力を高めている。


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特定非営利活動法人ゲーム保存協会

制作チーム
ゲームプレイ・解説:高橋 正俊(GPS)
エミュレーション準備:福田 卓也(GPS)
ソフトウェア:M88(Ver.2.21)
映像編集:モンセ・ジャン(GPS)
ビットマップ素材:ストロム・オスカー
パッケージスキャン:アーカイブ事業部(GPS)
データベース登録:松原 圭吾(GPS)
キュレーション:ルドン・ジョゼフ(GPS)

特別感謝:シュチュパニャック・ジョン、GPS賛助会員の皆さま

特別講演「伝説のゲームクリエイターに聞く」第6弾を終えて

2026年2月21日、ゲーム保存協会主催イベント「伝説のゲームクリエイターに聞く」第6弾を、開催しました。

ゲストには元スパイク・チュンソフト会長の中村光一さんをお迎えし、日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホールにて行いました。当初、昨年4月を予定しておりましたが諸般の事情で延期となり、今回無事に開催することができました。

例年は夏のNPO総会に合わせてイベントを開催していましたが、近年の酷暑を考慮し、今回は気候の良い時期へ日程を変更しました。当日は天気にも恵まれ、気温も程よく過ごしやすい、絶好のイベント日和となりました。

また会場も変更し、日比谷コンベンションホールをお借りしての開催としました。ホールは傾斜のついた座席で、客席からも見やすい環境のホールであったと思います。

 

当日は昼に開場となりました。

中村光一さんにゆかりのあるゲーム展示を行い、雑誌I/Oに投稿されたPC-8001のスクランブル、スーパーファミコンの風来のシレン、セガサターンの街(体験版)を展示させていただきました。
来場者が実際にプレイできる形で展示を行い、複数の方にプレイをしていただきました。

また懐かしそうに画面を眺める来場者の姿も見られ、良い展示であったと思います。

13時30分から講演は開始となりました。
例年より大きいホールでの開催であったため、180名程度の参加募集を行いましたが、募集は満員となりました。

会場には多くの中村光一さんが携わったゲームのファンが集まり、時折笑いが起こるなど、終始和やかな雰囲気で講演は進みました。SNSなどへの投稿をご遠慮いただきましたが、その分、3時間という長時間にわたり、これまでにはなかなかお伺いできなかった中村さんの歴史やゲーム開発について濃い内容をお話いただけました。

 

幼少期のころ、高校時代のPCとの出会いとエニックスコンテストに続き、チュンソフト起業への苦労。
初期のファミリーコンピュータでの開発から、デベロッパーとしてのドラゴンクエストなどへの関わり。
チュンソフトでご一緒にゲーム制作に携わっていた方々についてもお話をいただきました。
デベロッパーからパブリッシャーとしてサウンドノベルやローグライクといった新ジャンルをコンシューマーで確立させた時代のお話など。
そしてセガサターンでの街、スマートフォンでの位置情報をつかったテクテクテクテクについてもお伺いさせていただきました。

私、福田の準備したスライドで拙い司会ではありましたが、貴重なお話をお伺いできたものと思っています。時間はむしろ短く感じるぐらいで、一部ゲームタイトルについては時間の都合で触れることができませんでした。

最後に中村さんにとってゲームとは?という質問をさせていただき、
「ゲームは楽しい時間であり、自分にとっては作る時間がより楽しい」
というお言葉をいただきました。

非常に印象的なお言葉で、中村さんのゲームに対する姿勢がよく表れていると感じました。この言葉に会場から大きな拍手をいただきながら、講演は終了しました。

講演終了後は、例年であれば講演に参加いただいた希望者の方々との懇親会を用意し、中村さんとのお話いただける時間を設けておりましたが、今回の講演時間のスケジュールや会場周辺施設の都合もあり、懇親会の開催は見合わせました。

しかし、中村さんのご厚意をいただき、ロビーにて即席のサイン会のような形となり、ご参加いただいた方々と直接触れ合う時間を設けていただきました。

今回ご参加いただいた皆さんには、本当に感謝しております。

ゲーム保存協会はゲーム保存活動や研究のみならず、講演などを通じてゲームの歴史を掘り起こし、伝えていく活動にも今後さらに取り組んでいきたいと考えております。こうした取り組みはサポーターの皆さまからのご支援により実現するものです。これからも活動を継続できるよう励んでまいりますので、今後ともご協力の程どうぞよろしくお願いいたします。

ゲーム保存協会 福田卓也


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保存録#0002「金のリンゴを追いかけて」

今週のショート動画をご覧ください:

第2回の動画をお届けします。前回の動画をご覧いただき、ありがとうございました。視聴やシェア、コメントのひとつひとつが、少人数で活動する私たちにとって大きな励みになっています。
今回は前回とはまったく違う方向の作品を取り上げます。それがこのシリーズの面白さでもあります——日本のゲームの歴史は、思いがけないところへ繋がっていくものです。

今週の作品紹介:

パッケージ原本(当協会アーカイブよりスキャン)

夢大陸アドベンチャー【ユメタイリクアドベンチャー】
機種:MSX(ロムカセット)
©コナミ 1986

キャッチフレーズ:「シューティング+RPGの決定版!」「スピーディでパワフルなロマンティック・アドベンチャー」

タイトル画面 — 夢大陸への旅が始まる

1983年にコナミ工業からMSX用に発売された「けっきょく南極大冒険」の続編。病に倒れたペンギンの姫を救うため、金のリンゴを探す旅に出る — シンプルな物語の裏に、驚くほどの奥深さが隠されている。
前作も含め主人公であるペンギンくんが3Dの三人称視点で障害物を避けながらチェックポイントに指定時間内にたどり着くことを繰り返し最終的にゴールを目指す、というゲームシステムを採用している。

MSX1とは思えない滑らかな3Dスクロール

キャッチフレーズの通り、広告では発売当時に巷で大人気だったRPGという要素を売りの一つとして前面に押し出していたことが分かる。
この「夢大陸アドベンチャー」は前作に様々な要素を追加しほぼ新作ともいえる飛躍的な進化を遂げており、MSX1なのに画面全体が奥にぐりぐりと3D視点で高速にスクロールしたり、限られたドット数とカラー制限の中に表現された緻密なグラフィックはもちろんのこと、主人公のペンギンくんや敵キャラがドット絵アニメーションで非常に愛らしく表現されており、プレイヤーに見せる一挙一動やその表情には思わずほっこりさせられてしまうだろう。

魚を通貨にアイテムを購入

それに加えゲームデザインとしても非常にこなれており、氷上だけではなく水上や山岳地帯、水中やはたまた宇宙空間など、プレイヤーの興味を惹きつける作りとなっている様々なシーン構成に加え、新要素としてショップや豊富なアイテムの追加、それを購入するための通貨「魚」がバランスよく盛り込まれている。
プレイヤーはより先の面に進むためにどのようにお金を稼ぎ、どのアイテムを優先的に購入していくかという攻略要素をゲームをプレイしながら構築していくという奥深さを体験することになる。

氷上から宇宙空間まで多彩なステージ構成

そして特筆すべきはその音楽であろう。PSG3音を駆使し曲数も豊富なBGM群はそのどれもがクオリティが非常に高く、今でも多くの人がその全曲がゲームシーンと融合している名曲と評するなどその完成度がうかがえる。
難易度は中盤面までは誰でも到達できるものだが、後半面からはかなり高難度となっており、クリアを目指すにはなんとも挑戦しがいのある骨太アクションゲームに仕上がっている。


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特定非営利活動法人ゲーム保存協会

制作チーム
ゲームプレイ:岩崎 浩文(GPS)
解説:高橋 正俊(GPS)
エミュレーション準備:福田 卓也(GPS)
ソフトウェア:blueMSX(Ver.2.8.2)
映像編集:モンセ・ジャン(GPS)
ビットマップ素材:ストロム・オスカー
パッケージスキャン:アーカイブ事業部(GPS)
データベース登録:松原 圭吾(GPS)
キュレーション:ルドン・ジョゼフ(GPS)

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