蘇るウォーホールのデジタル・アート

フロッピーディスクに記録された作品は、ゲームだけではありません。
時には、モダンアートだって、フロッピーに記録されていることがあるのです!
本日は、Software Preservation Societyから届いた嬉しいニュースをお知らせいたします。

アンディー・ウォーホールは20世紀のアートを語る上で欠かすことのできない重要人物です。
1960年代以降のアメリカで、大量に消費されるモノやイメージをアートの文脈に持ち込んだポップアート界のいわば重鎮で、キャンベルスープの絵や、鮮やかな色合いのマリリン・モンローは、きっと誰もが一度はどこかで見たことがあるはず。
そんなウォーホールが1985年に残したデジタル作品を収めたフロッピーディスクが、この度、クリオフラックス(KryoFlux)の力で現代に蘇ったのです。

アートの世界で、デジタル技術を使った作品というのは、いつごろからあるのでしょう?
初期の例では1960年代に例えばゲオルク・ニース(Georg Nees)がコンピューターを使って作られた作品の展覧会を行っていたりします。ですから1985年のこのデジタルアートは、特別先駆的な試みだったとは言えないかもしれません。それでも、ウォーホールという当時すでに世界中で活躍していたアーティストが、80年代にコンピューターを使い新たな作品制作に取り組んだことには、歴史的な意味があるでしょう。
今回のフロッピーに収められていた作品は、コモドール社がAmiga1000という当時最先端のコンピューターの性能をデモンストレートするためにウォーホールに依頼したものだったそう。ウォーホールがAmigaで作品を制作する様子を収めたビデオなどが残っており、今回のフロッピー発見とデータ救出に至る経緯もこうした映像資料が一役かっています。

当時の映像:https://www.youtube.com/watch?v=wLvTG5hwa1A

今回のフロッピー救出は、ウォーホールがAmiga 1000を使って作品を制作するこのビデオをきっかけに、その作品を保存したフロッピーをなんとか保存できないかと2011年に動き出したところから始まりました。
最初は古いPCを扱っていたCMUコンピュータークラブがフロッピーの読み込みと再生にチャレンジ。ご存知の通りフロッピーはとてもデリケートなメディアで劣化やデータ消失の危険が高いため、この貴重なデータを専門的なやり方できちんと長期保存できるようマイグレーションしようと動き出したのです。

フロッピーディスクに保存されたAmigaのためのデータ、というのは、古いゲームの保存を行う私たちにとってはお馴染みのシチュエーション。脆弱なディスクを細心の注意を払ってマイグレーションするのであれば、SPS(Software Preservation Society)の持っているクリオフラックス(KryoFlux)の技術が最適です。

クリオフラックスのサイト:http://www.kryoflux.org/

SPSはもともとAmigaの古いゲーム作品をきちんとした形で後世に保存し継承しようという目的で立ち上げられた団体です。
ゲームは他のアートと同じく貴重な文化財で、後世の研究者が困らないようきちんとデータを保存していかなければいけないという強い使命感を持って活動している、国際団体です。NPO法人ゲーム保存協会は立ち上げ以前からこのSPSと協力体制をとっており、クリオフラックスを使ってゲーム保存のための様々な作業を続けています。

もともとゲーム保存のために開発されたクリオフラックスですが、実は現在、高い技術力が国際的に評価され、たとえばイギリス大英図書館で著名作家たちのフロッピーデータの保存に活用されたり、フランス国立図書館(BNF)で資料長期保存のために使われたりしています。日本でも、たとえば一昨年、西陣織の織り機に使われるフロッピーディスクとフロッピードライヴを、劣化や老朽化から救い出すためにこの技術を使って、私たちゲーム保存協会が活動しています。

今回も、ウォーホールのデジタル作品を長期保存するための技術として、クリオフラックスが選ばれています。

実際にどのような作品だったのか、上記リンクからご覧いただくことができます。
1987年の死去まで、アートの最先端を走り続けたウォーホール。当時最先端のコンピューターを用いて作られたデジタル作品は、徹底的に芸術作品の「意味」や「深遠さ」を拒否した彼の姿勢とも関係し、非常に興味深いものです。こうした貴重な資料を残す一助としてゲーム保存を使命とする私たちの技術が活用されたこと、長年ともに動いてきたSPSのメンバーと共に誇りに思っています。

モダンアートも伝統工芸もゲームも、人間が生み出したかけがえのない文化です。
それを後の人々に残したいという気持ちは、みんな同じ。
こうした文化に対する熱い気持ちが、ジャンルを超えてつながり、次世代のより豊かな文化活動を支えていきます。

ウォーホールだけでなく、きっと世界にはまだまだ、劣化の危機から救い出し長期保存しなくてはならない文化財が眠っているはず。私たちは、そうしたすべての文化財のために、これからも活動を続けていきたいと思っています。

ゲーム保存協会 ルドン

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