文化庁助成事業 「レトロゲーム・データベースのデータ入力」を行いました

吹く風が肌に心地よいこの頃ですが、皆さまいかがお過ごしですか? 今回は、さわやかなこの季節にぴったりの、嬉しいニュースをお届けします。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、数年前から日本でも、文化庁が中心となって漫画やアニメ、ゲームといった新しいメディア芸術をアーカイブし、文化活動をさらに豊かにする取り組みを行っています。NPO法人ゲーム保存協会では、昨年より文化庁が主催する文化芸術振興費補助金メディア芸術アーカイブ推進支援事業に参加していました。
私たちが事業に参加する前から、国が公開しているメディア芸術アーカイブのデータベースにはいわゆるレトロPCゲームのエントリーもありましたが、不十分な情報掲載や不確定な情報の入力が目立っており、現物資料を保管する当協会として国の取り組みに協力しきちんとしたデータベースを公開したいと考えました。
今回は2017年10月から2018年3月までほぼ半年をかけ、当協会が完品を所蔵するPC-8001シリーズとPC-8801シリーズのソフトを、すべて現本を確認しながらデータベースに入力しました。
実は文化庁の助成金は助成対象プロジェクトの全体をサポートするものではなく、全体予算のうち4割は団体側が自己負担する必要があります。皆様からの日頃のご支援がなければ、応募すらできなかった事業です。
文化庁へのデータの受け渡しも終了し、公開が予定されている一方で、今回の作業で確認した情報のうち文化庁側では公開されないより詳細な情報を、ゲーム保存協会のデータベースで公開できるよう準備を進めています。

今回、助成を受けたメディア芸術デジタルアーカイブ事業と呼ばれる文化庁の取り組みですが、皆さんもご存知の「クールジャパン戦略」の一つとして、アニメやゲームといったコンテンツの発信に力をいれようという国の動きのひとつです。文化庁では漫画、アニメ、ゲームやメディアアートなどを大きく一括りに「メディア芸術」と呼び、数年前から様々な助成活動を展開しています。毎年開催されるメディア芸術祭での作品展示や表彰もその一つですが、新しいコンテンツを生むには過去の作品のアーカイブが大切。どんなに有名な画家であっても、過去数世紀に渡る名画の歴史を学ばずに新しい作品を描くことはできません。歴史なくして、未来は作れない。ということでメディア芸術も同じく、過去の作品のアーカイブが重要と考え、現在はこのような活動へ予算が付いています。
平成22年度以降、文化庁でもアーカイブに特別に予算を割くようになり、年間約15億円のメディア芸術振興予算のうち、一部がゲームのアーカイブのために使われました。その後5年間、事業名の変更もありましたが、一部ではあれゲームのデータベース作成のため予算が確保されてきました。(参考資料は記事最後にございます)。
例えば平成29年度にはメディア芸術連携促進等事業のため、3億6700万円の予算がつけられ、産官学が共同でアニメや漫画やゲームといったメディア芸術の資料を保存、データを登録することで「ジャパンサーチ(仮称)」という大きなデータベースに統合する様々な取り組みが企画されています。
こうしたこれまでの取り組みにより現在文化庁が公開するデータベースにはコンシューマーソフトが4万件リストアップ、アーケードが5千件入っていますが、PCソフトは2千件ほどにとどまります。日本のゲーム史を知っていれば、日本のゲームコンテンツの中でPCゲームの割合はもっと大きいことがすぐにわかるはずです。プレイステーション発売前のいわゆる「レトロ」と呼ばれるゲーム黄金期に絞って考えれば、発売されたゲームタイトルのうち70%はPCソフトです。その後の時代を含めた全てのゲームソフトを網羅して入力したとしても、登録件数のうち40%ほどがPCソフトのタイトルになっているはずですが、文化庁が公開するリストでは圧倒的に少ない数しか登録されていないことがわかります。
国が発表しているデータベースなのに、実際のゲームの歴史に照らして報に明らかな偏りがある点に問題を感じた私たち。特にレトロPCゲームのアーカイブ化に自信のあるゲーム保存協会として、文化庁のデータベース事業に関わる事にしたのです。

入力された情報は全て一次資料と呼ばれるソフト原本を確認したもので、ソフトの状態も、箱やソフト、説明書などに欠品のない資料のみを使っています。
ひとつずつソースを確認し、PC-8001とPC-8801シリーズから、あわせて1500本以上のソフトの情報を纏めました。当協会の所蔵には同一ソフトが2本以上あるものもありますが、場合によって細かなバージョン違いが見つかる可能性もありますので、それらも含めてすべて確認しました。作業に従事したスタッフは合計で3000本以上のパッケージを目視で確認しました。
今回の入力はすべて原本を完品で持っているものに限って作業をしました。そのため、当協会が完品を保有していない資料は入力されていません。ですが、原本確認を経て得られた情報は全て確実に存在し、実物で証明できる情報です。必要があれば、いつでもアーカイブから資料を出して同じものを確認できます。
また、ゲーム保存協会では資料の情報入力に、アーカイブ先進国であるフランスの手法を取り入れ、汎用性の高いデータベースを作っています。パッケージ上のゲームタイトルの表記法から、サブタイトルの区別まで、資料を手元に持たない人でも情報を見るだけでほしい情報がすべて手に入るよう記載しています。将来的に、こうした当協会の正式なデータベースを、文化庁側の情報とつなぐことができれば、資料を検索する人たちに大きなメリットがあると考え、こちらも公開に向け少しずつ動き出しています。

皆さんは、図書館や本屋さんで本を探したことがありますか? ぼんやり立ちよって本棚を眺めて探すのではなく、必要のある特定の1冊を探した経験です。レポート作成や論文記事執筆などするお仕事であれば、日常的にこうした資料の検索をしますが、何か特定のことを調べたい時、きちんとしたデータベースが存在することはとても大切です。Wikipediaが登場し、ブログやSNSも一般化した現在、ネット上には様々な情報が散らばっています。調べ事をするのに気軽にキーワードを打ち込み、検索でヒットしたページを開けば、確かに自分が知らなかったことが書かれていたりします。ですが、そうした情報がどこまで信憑性の持てるものなのかは、どうやって判断するのでしょう? 文章やサイトの雰囲気は何のあてにもなりません。大切なのは、情報の出どころである「ソース」がしっかりと記載されているかです。
図書館のOPACやCiNii、JSTORなどに登録される資料情報は、どれも実際の資料を持つ図書館司書やアーキビストが情報を確認しながら入力しています。そこに出ている情報は、資料そのものを見て書かれており、資料を取り寄せたい時に必要な書誌番号や出版社情報、資料の所蔵館情報などが含まれますから、「このデータベースに入っている情報=実在し、読むことのできる資料」です。人の未来を左右するかもしれない様々な研究で、存在するかどうかわからない資料に右往左往させられてはたまりませんから、信憑性は、きちんとしたデータベースにとって重要かつ基本的な要素です。ゲームも全く同じです。

ゲームも現物を確認せず作られたデータベースには信憑性がありません。たとえば書籍でも、どこかの雑誌に「近日出版」と広告が載っていながら、何かの理由でそのまま出版されなかった本だとか、広告に掲載された出版日を過ぎて出版されたものなどがありますね。ゲームの場合はそうしたケースが沢山ありますし、雑誌やゲーム会社が出しているカタログはあてになりません。最終的に出来上がって世に出たゲームそのものを確認しなければわからないことが、沢山あるのです。
たかがゲーム、されどゲーム。ゲーム資料を検索する人が、適切な資料に確実にたどり着けるツールを準備することは、ゲーム文化の未来にとってとても重要なこと。また、信頼のおけるゲーム資料のデータベースができれば、それまでゲームについて調べることのなかった別分野の人たちにも、ゲームという資料が学術的にも意味のある信頼できるコンテンツとして受け入れられ、たとえば20世紀の社会や経済の動向を研究し、これからの政治や世界を考える人たちや、過去の科学技術の発展から新しいテクノロジーの未来を予想し切り開く人たちなどにも、情報が参照され活かされるかもしれないのです。
文化庁側のデータベースに今回私たちが行った作業分のデータが反映更新されるまではまだ少し時間がかかるようです。ゲーム保存協会ではそれより一足先に、今回の助成事業で得た成果を皆さまに発表できればと考えております。単なるリストではなく、資料状況を正確に記載した専門的なゲームソフトのデータベース公開にむけ、私たちは最初の一歩を踏み出しました。

「このゲーム、なんだろう?」
そんな好奇心から生まれる豊かな未来を信じて、
データベース作成にもゲーム文化への深い愛を混めて真摯に取り組みます。
先にも述べたとおり、国の助成金を得るにもまずゲーム保存協会自体に、活動を継続し適切な運営を続けられるだけの資金力がなければなりません。
私たちのもとにはシャープのMZシリーズやXシリーズ、やNECのPC-6001やPC-98シリーズ、富士通のFMシリーズやMSXといった、他機種のソフトが揃っています。こうした資料を適切な形でデータベースに入力し公開するためにも、ゲーム保存やアーカイブに関心を持つ皆さんの声援が必要です。
今後もこの取り組みを継続するために、ぜひ、一緒に活動を支えてください。

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