公式データベースへの最初の一歩

文化庁助成事業 「レトロゲーム・データベースのデータ入力」を行いました

吹く風が肌に心地よいこの頃ですが、皆さまいかがお過ごしですか? 今回は、さわやかなこの季節にぴったりの、嬉しいニュースをお届けします。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、数年前から日本でも、文化庁が中心となって漫画やアニメ、ゲームといった新しいメディア芸術をアーカイブし、文化活動をさらに豊かにする取り組みを行っています。NPO法人ゲーム保存協会では、昨年より文化庁が主催する文化芸術振興費補助金メディア芸術アーカイブ推進支援事業に参加していました。
私たちが事業に参加する前から、国が公開しているメディア芸術アーカイブのデータベースにはいわゆるレトロPCゲームのエントリーもありましたが、不十分な情報掲載や不確定な情報の入力が目立っており、現物資料を保管する当協会として国の取り組みに協力しきちんとしたデータベースを公開したいと考えました。
今回は2017年10月から2018年3月までほぼ半年をかけ、当協会が完品を所蔵するPC-8001シリーズとPC-8801シリーズのソフトを、すべて現本を確認しながらデータベースに入力しました。
実は文化庁の助成金は助成対象プロジェクトの全体をサポートするものではなく、全体予算のうち4割は団体側が自己負担する必要があります。皆様からの日頃のご支援がなければ、応募すらできなかった事業です。
文化庁へのデータの受け渡しも終了し、公開が予定されている一方で、今回の作業で確認した情報のうち文化庁側では公開されないより詳細な情報を、ゲーム保存協会のデータベースで公開できるよう準備を進めています。

今回、助成を受けたメディア芸術デジタルアーカイブ事業と呼ばれる文化庁の取り組みですが、皆さんもご存知の「クールジャパン戦略」の一つとして、アニメやゲームといったコンテンツの発信に力をいれようという国の動きのひとつです。文化庁では漫画、アニメ、ゲームやメディアアートなどを大きく一括りに「メディア芸術」と呼び、数年前から様々な助成活動を展開しています。毎年開催されるメディア芸術祭での作品展示や表彰もその一つですが、新しいコンテンツを生むには過去の作品のアーカイブが大切。どんなに有名な画家であっても、過去数世紀に渡る名画の歴史を学ばずに新しい作品を描くことはできません。歴史なくして、未来は作れない。ということでメディア芸術も同じく、過去の作品のアーカイブが重要と考え、現在はこのような活動へ予算が付いています。
平成22年度以降、文化庁でもアーカイブに特別に予算を割くようになり、年間約15億円のメディア芸術振興予算のうち、一部がゲームのアーカイブのために使われました。その後5年間、事業名の変更もありましたが、一部ではあれゲームのデータベース作成のため予算が確保されてきました。(参考資料は記事最後にございます)。
例えば平成29年度にはメディア芸術連携促進等事業のため、3億6700万円の予算がつけられ、産官学が共同でアニメや漫画やゲームといったメディア芸術の資料を保存、データを登録することで「ジャパンサーチ(仮称)」という大きなデータベースに統合する様々な取り組みが企画されています。
こうしたこれまでの取り組みにより現在文化庁が公開するデータベースにはコンシューマーソフトが4万件リストアップ、アーケードが5千件入っていますが、PCソフトは2千件ほどにとどまります。日本のゲーム史を知っていれば、日本のゲームコンテンツの中でPCゲームの割合はもっと大きいことがすぐにわかるはずです。プレイステーション発売前のいわゆる「レトロ」と呼ばれるゲーム黄金期に絞って考えれば、発売されたゲームタイトルのうち70%はPCソフトです。その後の時代を含めた全てのゲームソフトを網羅して入力したとしても、登録件数のうち40%ほどがPCソフトのタイトルになっているはずですが、文化庁が公開するリストでは圧倒的に少ない数しか登録されていないことがわかります。
国が発表しているデータベースなのに、実際のゲームの歴史に照らして報に明らかな偏りがある点に問題を感じた私たち。特にレトロPCゲームのアーカイブ化に自信のあるゲーム保存協会として、文化庁のデータベース事業に関わる事にしたのです。

入力された情報は全て一次資料と呼ばれるソフト原本を確認したもので、ソフトの状態も、箱やソフト、説明書などに欠品のない資料のみを使っています。
ひとつずつソースを確認し、PC-8001とPC-8801シリーズから、あわせて1500本以上のソフトの情報を纏めました。当協会の所蔵には同一ソフトが2本以上あるものもありますが、場合によって細かなバージョン違いが見つかる可能性もありますので、それらも含めてすべて確認しました。作業に従事したスタッフは合計で3000本以上のパッケージを目視で確認しました。
今回の入力はすべて原本を完品で持っているものに限って作業をしました。そのため、当協会が完品を保有していない資料は入力されていません。ですが、原本確認を経て得られた情報は全て確実に存在し、実物で証明できる情報です。必要があれば、いつでもアーカイブから資料を出して同じものを確認できます。
また、ゲーム保存協会では資料の情報入力に、アーカイブ先進国であるフランスの手法を取り入れ、汎用性の高いデータベースを作っています。パッケージ上のゲームタイトルの表記法から、サブタイトルの区別まで、資料を手元に持たない人でも情報を見るだけでほしい情報がすべて手に入るよう記載しています。将来的に、こうした当協会の正式なデータベースを、文化庁側の情報とつなぐことができれば、資料を検索する人たちに大きなメリットがあると考え、こちらも公開に向け少しずつ動き出しています。

皆さんは、図書館や本屋さんで本を探したことがありますか? ぼんやり立ちよって本棚を眺めて探すのではなく、必要のある特定の1冊を探した経験です。レポート作成や論文記事執筆などするお仕事であれば、日常的にこうした資料の検索をしますが、何か特定のことを調べたい時、きちんとしたデータベースが存在することはとても大切です。Wikipediaが登場し、ブログやSNSも一般化した現在、ネット上には様々な情報が散らばっています。調べ事をするのに気軽にキーワードを打ち込み、検索でヒットしたページを開けば、確かに自分が知らなかったことが書かれていたりします。ですが、そうした情報がどこまで信憑性の持てるものなのかは、どうやって判断するのでしょう? 文章やサイトの雰囲気は何のあてにもなりません。大切なのは、情報の出どころである「ソース」がしっかりと記載されているかです。
図書館のOPACやCiNii、JSTORなどに登録される資料情報は、どれも実際の資料を持つ図書館司書やアーキビストが情報を確認しながら入力しています。そこに出ている情報は、資料そのものを見て書かれており、資料を取り寄せたい時に必要な書誌番号や出版社情報、資料の所蔵館情報などが含まれますから、「このデータベースに入っている情報=実在し、読むことのできる資料」です。人の未来を左右するかもしれない様々な研究で、存在するかどうかわからない資料に右往左往させられてはたまりませんから、信憑性は、きちんとしたデータベースにとって重要かつ基本的な要素です。ゲームも全く同じです。

ゲームも現物を確認せず作られたデータベースには信憑性がありません。たとえば書籍でも、どこかの雑誌に「近日出版」と広告が載っていながら、何かの理由でそのまま出版されなかった本だとか、広告に掲載された出版日を過ぎて出版されたものなどがありますね。ゲームの場合はそうしたケースが沢山ありますし、雑誌やゲーム会社が出しているカタログはあてになりません。最終的に出来上がって世に出たゲームそのものを確認しなければわからないことが、沢山あるのです。
たかがゲーム、されどゲーム。ゲーム資料を検索する人が、適切な資料に確実にたどり着けるツールを準備することは、ゲーム文化の未来にとってとても重要なこと。また、信頼のおけるゲーム資料のデータベースができれば、それまでゲームについて調べることのなかった別分野の人たちにも、ゲームという資料が学術的にも意味のある信頼できるコンテンツとして受け入れられ、たとえば20世紀の社会や経済の動向を研究し、これからの政治や世界を考える人たちや、過去の科学技術の発展から新しいテクノロジーの未来を予想し切り開く人たちなどにも、情報が参照され活かされるかもしれないのです。
文化庁側のデータベースに今回私たちが行った作業分のデータが反映更新されるまではまだ少し時間がかかるようです。ゲーム保存協会ではそれより一足先に、今回の助成事業で得た成果を皆さまに発表できればと考えております。単なるリストではなく、資料状況を正確に記載した専門的なゲームソフトのデータベース公開にむけ、私たちは最初の一歩を踏み出しました。

「このゲーム、なんだろう?」
そんな好奇心から生まれる豊かな未来を信じて、
データベース作成にもゲーム文化への深い愛を混めて真摯に取り組みます。
先にも述べたとおり、国の助成金を得るにもまずゲーム保存協会自体に、活動を継続し適切な運営を続けられるだけの資金力がなければなりません。
私たちのもとにはシャープのMZシリーズやXシリーズ、やNECのPC-6001やPC-98シリーズ、富士通のFMシリーズやMSXといった、他機種のソフトが揃っています。こうした資料を適切な形でデータベースに入力し公開するためにも、ゲーム保存やアーカイブに関心を持つ皆さんの声援が必要です。
今後もこの取り組みを継続するために、ぜひ、一緒に活動を支えてください。

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メディア芸術連携促進事業の予算及び要求額に関する資料等(PDF形式)

平成29年度メディア芸術アーカイブ推進支援事業/採択一覧
メディア芸術の振興に関する平成22年度施策の概要資料
デジタル・アーカイブについて
メディア芸術分野(平成27年度)
メディア芸術分野(平成29年度)

内部で使っているツールの一画面(ハイレゾ)

アーカイブ公開

NPO法人ゲーム保存協会「ゲーム・アーカイブ」11月25日より公開

公共性の高い取り組みを目指して

2011年に設立したNPO法人ゲーム保存協会は、これまで、日本の貴重なゲーム資料を保存するため、公共性を保ち中立的な立場から活動を続けてきました。2015年には、所蔵する雑誌・書籍のうち、国会図書館などにも収蔵がない資料を含む2200冊を一般公開し、現在も資料を必要とする一般の利用者が無料で閲覧できる資料室として本部の一部を開放しています。

そして2017年、いよいよNPO法人ゲーム保存協会のゲームソフト・アーカイブの公開が決定しました。今週11月25日から、一般の利用者の受け入れを開始します。

ゲームはともすると商品として扱われ、利益と離れた真面目な研究や調査のために資料を閲覧したい人たちがいても、一般図書館や博物館に収蔵されていないなどの理由から、無料で資料を見られる場所がほとんどありません。ゲームの歴史を残すには、私利私欲から離れてゲーム保存の未来のために何が出来るか考え、行動する必要があります。NPO法人ゲーム保存協会は以前から、団体が所蔵するゲーム・ソフトを、それを必要とする多くの人と共有したいと考えてきました。

 

アーカイブの意義

現在、日本の各市町村には一般市民が必要に応じ自由に図書を閲覧できる図書館があります。古今東西の名画や歴史資料を展示する美術館や博物館では、多くの人に自由に資料を見てもらえるよう展示が行われ、こうした文化の共有が、次世代の文化活動を活性化し豊かな未来を作っていくと言われています。図書館や博物館のように、資料を蓄積し展示や貸し出しができるよう管理する機関を、アーカイブと呼びます。この社会に活きる全ての人が必要な時に必要な資料を手に取れることは、平等な社会を作るためにとても重要なことですが、ゲームに関しては、これまでそうしたアーカイブが存在しませんでした。レトロ・ゲームとも呼ばれる古いビデオ・ゲーム資料はオークションで高値で売られ、一般の図書館や資料館には所蔵がありません。これから発展していくであろうゲームの歴史研究や、これから作品を作る若いクリエイターを育てるには、一般の利用者が限られた予算でもゲーム資料を見ることのできる環境作りが大切です。

 

ゲーム保存協会の公開資料

誰もが活用できるゲーム・アーカイブを作る。これはNPO法人ゲーム保存協会の長年の夢でした。ただでさえ資料数が多く収集も修復も困難なゲームのアーカイブは、様々な困難を伴う壮大な計画ですが、今回はその記念すべき第一歩として、NPO法人本部にあるアーカイブの一部を公開します。

世界でもゲーム・ソフトを一般公開しているアーカイブ機関は非常に少なく、日本ではNPO法人ゲーム保存協会が初のアーカイブ機関となります。また、今回公開するのは80年代を中心に日本独自の発展を遂げたPCゲームソフトのアーカイブで、日本のPCソフトを閲覧可能なアーカイブは、NPO法人ゲーム保存協会が世界で唯一となります。

公開するのは本部アーカイブ室にある2万本以上の資料のうち、一般公開の準備ができている6300本のソフト。20世紀のPCゲームの歴史における重要な資料の数々が含まれています。

閲覧可能なアーカイブのリスト(ゲーム)
閲覧可能なアーカイブのリスト(雑誌)

 書斎

これからにつながる取り組み

今回の公開は、あくまでも最初の一歩でしかありません。アーカイブには今後も閲覧可能な資料を追加していく予定です。さらにこうした貴重な資料を劣化消失から守るための保存作業も続けていきます。このアーカイブをきっかけに、ゲーム研究のフィールドが広がること、そして、このアーカイブを活用して、次世代のクリエイティブな動きが起こることを願っています。今まで、手に取ってみることのできなかった古いゲームソフトを、実際に見たり、遊んだりできる活きたアーカイブとして、意義ある取り組みを続けていきたいと思いますので、この活動に意味があると感じる方には、ぜひNPO法人ゲーム保存協会のサポーターとして継続的なご支援ご協力をお願いいたします。

 

アーカイブの利用について

今回公開するNPO法人ゲーム保存協会のゲーム・アーカイブは、磁気媒体のソフトや壊れやすいハード機器など脆弱な資料を扱う専門のアーカイブです。多くの利用者に自由に資料を閲覧いただくことが理想ではありますが、資料の性質上、また管理運営の問題から、現在はいくつか利用の制限を設けています。

まず、資料の安全性を守るためにも、アーカイブを利用される方には出来る限り、NPO法人ゲーム保存協会へのサポーター登録をお願いしております。

次に、利用時には資料の閲覧理由と閲覧資料名を明示いただきます。特に閲覧理由には、記事執筆のための調査、論文資料としてなど、最終的に公開・発表されるプロジェクトをお尋ねしております。著作権など権利をお持ちの方からの各種お問い合わせもお受付けいたします。

実際の資料閲覧は、予約フォームからいくつか必要事項を送信いただいたのち、アーカイブ担当者との日程調整をお願いしております。その後、決められた日時に世田谷区の本部にて資料を閲覧いただきます。資料閲覧時に必要なハードウェアがある場合は、本部にてご用意いたします。

アーカイブ利用の予約フォーム

フロッピー 

なぜサポーターが必要なのか

世界初となるPCソフトのアーカイブは、国の図書館でも博物館でもなく、一般のNPO法人が運営しています。最近になってようやく、文化庁が主体となってゲームを文化として認めるよう動き出してはおりますが、ゲーム作品の閲覧ができる国立のアーカイブが実現するまでにはまだ長い時間がかかるでしょう。ゲームの場合、国のアーカイブ建設を待っていては、資料が散逸し収集は不可能となり、劣化が原因で貴重なデータも消滅してしまいます。

NPO法人ゲーム保存協会は、そうした悲劇から一つでも多くの資料を救い、一刻も早くゲームの歴史研究や価値の見直しといった文化活動が広がってほしいと考えています。そのために、NPOとして、アーカイブを開きました。

開かれたアーカイブの維持にはお金がかかります。日常的かつ恒常的に続く資料の管理、保存活動、予約者の受付など、ボランティアの労力だけでは賄えない部分も多々あります。公平な運営方針のもと、自由に資料閲覧ができる開かれたアーカイブを守るため、サポーターの皆様からのご支援が必要なのです。

サポーター登録することは、単にプロジェクトに資金的援助を行うというだけではありません。サポーター登録は、アーカイブを継続してほしいと願う声を送ることです。私たちは、いただいたご支援を、今後も資料を保存しアーカイブを大きく育ててほしいという皆さんの声として受け止め、真摯に取り組みを続けていきます。

まだご支援ご参加いただいていない方、ぜひご登録をお願いいたします。

サポーター登録へのページ

ぱのらま島

特別講演「伝説のゲームクリエイターに聞く」第2弾を終えて

2017年7月22日にマイステイズ御茶ノ水コンファレンスセンターにてゲーム保存協会主催による講演イベントを開催しました。
毎年7月に開催しておりますイベントですが、活動開始5周年となった昨年は日高徹さんをお迎えして講演を開催し、大変好評いただきました。
そこで今年もゲストを迎えての講演を企画させていただきました。メンバーやサポーターの方々から広がったコネクションによって、今回は3人ものゲストをお迎えすることが出来ました。

ザナドゥ

ザナドゥ(シャープX1版)

「天才プログラマー」「スタープログラマー」の名をほしいままにした元日本ファルコムの木屋善夫さん、同じく元日本ファルコムで数々の名作グラフィックを手がけて来られた山根ともおさん、そしてお二人をよくご存知のログイン元編集長 新井創士さん(ほえほえ新井さん)という3名の豪華ゲストの方々です。

当日は午前に正会員のみによる総会を開催し、午後よりイベントを開催しました。講演に先立って13時より「ファルコム黎明期―初期のゲームソフトを振り返る―」展を行いました。資料展示室にて協会メンバーが所蔵している日本ファルコム作品の貴重なバッケージを説明とあわせて展示させていただきました。初作ギャラクティックウォーズ1は非情にレアな初期版の紙パッケージ展示もあり、資料価値はかなり高い展示であったと自負しております。
また展示室にはPC-8801を2台をセッティングし、木屋さんの処女作ギャラクティックウォーズ1と2作目のぱのらま島をプレイできるように用意させていただき、多くの方に楽しんで頂くことができました。
講演は展示会場と同フロアーにあります会議室を利用し、100名分のお席を用意させていただきましたが、事前の予約で満席となる盛況ぶりでした。

バードランド&スーパー四人麻雀

黎明期のゲームソフト

14時からNPOの2016年度年次報告を正会員の日下よりプレゼンテーションさせていただきました。レトロPCの修理・メンテナンス資料をまとめるというプロジェクトの説明を行った際に「修理が必要なレトロPCを持っていますか?」という質問を来場者へさせていただいたところ7割近くの方が挙手されておられましたことは、NPOとしてのプロジェクトを進める必要性を強く感じました。
年次報告を終えて、続けて3名のゲストにご登壇いただき、ゲーム保存協会特別講演「伝説のゲームクリエイターに聞く」第2弾と題しまして、木屋さん、山根さんが日本ファルコムに在籍しておられた当時のお話を中心にご講演いただきました。
はじめに木屋さんの歴史を振り返る形でお話をお伺いさせていただきました。
PCでプログラミングを始める前のころのお話から、当時の日本ファルコムの環境や開発環境などお答え頂きました。講演で印象が強かったお言葉は「アセンブラが一番簡単な言語でしょ?」でした。やはり天才プログラマーです。
山根さんにも同じく日本ファルコム入社以前の活動からお伺いし、日本ファルコムでのグラフィック開発環境やチーム毎のカラーの違いなどについて興味深いお話を頂きました。「下絵などはなく、いきなりドットを打っていた」という作風で様々なキャラクターを作成されていたことに驚きました。
お二人にお話いただく中、新井さんからは雑誌のランキングに関するお話や他紙との関係、日本ファルコムの取材に関してなど、当時の雑誌編集を行っていた方でしかわからないようなエピソードを教えて頂きました。特に「ファルコムは取材の対応も良く、発売延期がないメーカーだった」というお話は日本ファルコムの姿勢を伺えるお言葉でした。

ギャラクティックウォーズ1 日本ファルコム展示会

一時間ほどの講演の後、小休憩を挟み、続いて木屋さんと山根さんが作成された個別のゲームソフトについてのお話をお伺いしました。
ギャラクティックウォーズ1から始めさせて頂き、ぱのらま島、ドラゴンスレイヤー、ザナドゥ、ソーサリアン、ロードモナーク、風の伝説ザナドゥなどの木屋さんの作品だけではなく、太陽の神殿、イース、スタートレーダーといった山根さんがグラフィックや原案に携わった作品についても、制作にまつわる思い出や当時の苦労、雑誌での評価などについてもお話いただきました。
一部は黒歴史となっているような部分、80年代であったことによる緩さなどのお話もお伺いできました。自分としては、もうすこし突っ込んだ内容についてもお聞きしたかったのですが、お二人の作品が膨大なために時間的に割愛せざるを得ないことが多く、消化不良ぎみでした。
司会進行の不手際で予定公演時間をオーバーしてしまいましたこと、最後の方は急いで進行してしまったことを当日ご参加いただいた方々にお詫びします。
最後に「お二人にとってのゲーム制作とは?」とお伺いしたところ、山根さんからは「楽しんでくれる人のためにやっていること」。そして木屋さんからは「趣味」というお答えでした。

コンファレンスルーム

秋葉原近辺のコンファレンスルーム

講演終了後は会場を移して、サポーターの方々とカクテルパーティで二次会を行いました。
こちらの席でも講演ではお話いただけなかったような話題も飛び出し、新井さんからは「当時の雑誌編集者を集めて話をすることなんかも面白いかも」というような、今後のイベントへ繋がるようなお話もいただけました。
こちらで1時間半ほど歓談の後、NPO正会員を中心としたメンバーで居酒屋にて打ち上げを行い、解散となりました。
非常に充実したイベントで、司会ながらに楽しむことが出来た1日でした。
今回のイベントへご来場、参加くださった多くの方々へ感謝いたします。
ゲーム保存協会はゲーム保存活動や研究のみならず、講演などを通じてゲームの歴史を掘り起こし、伝えていく活動も精力的に開催させていただきたいと考えております。こうした取り組みはサポーターの皆さまからのご支援により実現するものです。ゲーム保存協会の活動にご支援ご協力いただいている皆さまには、協会員一同、深く感謝いたします。そして、これからもこうした取り組みを継続できるよう、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

カクテルパーティ

カクテルパーティ

事前に頂いた質問は可能な限り講演中にお伺いしましたが、いくつか漏れがありました。後日、ご回答をいただきましたので、質問と回答を記載させていただきます。

木屋さん

木屋さんへの質問

■なぜX1用テープ版ザナドゥを販売することになったのでしょうか?テープ版開発時に苦労したことはありますか?
【答え】
ハードウェアへのアクセス部分(当時BIOSと呼んでいました)が完全に分離されていましたのでそれを活かすことにより比較的簡単に対応できたので挑戦してみました。
実際、数週間で動かすことができたのですが、やはりテープは遅いwで、その調整に結構手間取ったと思います。

■家庭用ゲーム機での開発で、 パソコン向けとは違ったご苦労などのエピソードはございますか。(特に「ドラゴンスレイヤー」のスーパーカセットビジョン版・ ゲームボーイ版に興味がありますが、 これらに直接関わられていないのであれば申し訳ありません)
【答え】
ドラゴンスレイヤーのSCVもGBも関わっておりません。
PC用の開発もゲーム専用機も当時はICEなど高価な機械を使用しておりましたので特に違いは感じませんでした。
ただ、生産ロットの単位が大きいのでバグを仕込んでしまうと損害が大きく、そのへんは慎重にならざるを得ませんでした。

■月刊BEEPに「ぱのらま島では技術が追い付かず、 やりたいことがほとんどできなかった」 とインタビューに答えておられましたが、実際にプログラム技術が追い付けば、 どんなアイデアを盛り込んだゲームを完成させたかったんでしょうか?
【答え】
覚えてないです。

■当時のクリエイティブの根源と、今のゲームクリエイティブにアドバイスしたい事があればぜひお聞きしたいです。
【答え】
そんな偉そうなものはないです。
ただ、仕事としてとか、知名度を上げたいとか、稼ぎたいとかではなく
自分が作りたいものを作っていただけですので…

山根さん

山根さんへの質問

■当時日本ファルコムで3チームでの開発に携わっておられますが、チームの制作環境の違いや戸惑ったこと、印象に残っているエピソードなどありましたら教えていただけますと幸いです。
【答え】
ファルコムに入って初めて組んだのが木屋さんになりますが、第一印象は『おっかない人』でした。
他人を拒絶してるヤンキーのイメージが近いですね。
当初は会話は必要最小限に限られ、私的な話はそれ程していなかったと思います。
トミオービルに移った頃は結構フランクになっていたようにも思いますが、私的には最後までおっかない人の印象は無くなりませんでした。
木屋さんとのエピソードで語れるようなもの(?)は、遅刻貯金箱、倉庫冷房攻め、グラディウス暴行事件以外ではすぐ思いつくものはありません。
また、これは最近になって再会した音楽の阿部さんから聞いた話ですが、「とにかく山根さんの木屋さんからの扱いが見るに堪えないほど酷く」て、私の事を30年たっても思い出せたそうです。
たしか木屋さんの机で勝手にファミコンかなんかを遊んでいたら物凄い突っ込みを食らったとか、そんな状況だったかと思いますが。

木屋さんに押さえつけられて自由な製作が出来なかった(と当時は考えた)私は、新たに入社してきた橋本さんと組めば自由に作れると思って、ロマンシアの後に橋本さんとイースを作る事になる訳です。
橋本さんと初めて一緒に仕事をしたのは太陽の神殿になりますが、これはアステカの二作目として基本的にオリジナルとは捉えてませんでしたから、(当時の私は)自由に作っていたとは考えなかったのですね。
橋本さんはスタッフの言う事を良く聞いてくれ、いろいろと盛り込もうとしてくれました。故にスケジュール的には問題となる事もあったりしましたが。
絵のデータやメモリ領域もデザイナーの要望をなるべく叶えるべく試行錯誤してくれました事は、当時からものすごく感謝していました。
橋本さんはご自宅にスタッフを招いてゲームで遊ぶやら、ビデオを楽しむやら、とてもフレンドリーなお付き合いをさせてくれました。
カトービルの頃(Ys開発中か?)、MSX2のコナミの新作が出る度に会社に2人で居残って徹夜してエンディングまでPLAYしたものです。んな事してるからYsが1パッケージに入らなくなってしまった気もしますが。

富さんはゼネラルプロダクツ上がりという事もあって、私にとっては3人の中で最も考えを伝え易かった人でした。
ですが、解かっていた上でそれをストレートにネタにする事を憚らない大阪芸人でもありましたので、面倒くせぇと感じる事も多々あったりもしました。
お互い結婚していなかった事もあって、カトービルの近くにある居酒屋一休(今も未だある)でよくお酒を一緒して愚痴を言い合っていたりしましたね。
当時モデムが一般人でも入手できる程度に普及し始めていて、1200ボーレートだったかその程度のモデムを使って、都内のBBSを介してグラフィックデータを送受信してみたりとかもしました。
物凄い長い時間「ピ-ガ-」して、NTTにお金を払ってまで、しょぼい白黒のリボンの絵なんかを受け取ったりしてみたり。
純粋なグラフィックの転送は当時のハードスペックでは無理があると解ってましたけど、試してみたい気持ちが抑えきれなかったりしたもので。

開発環境の違いで戸惑う事はほぼ無かったです。
木屋さんのツールは私にとってはデファクトスタンダードみたいなものでしたし、他のチームでも要望を出せばそれなりに応えてくれましたから。
ですが、X1ザナドゥテープ版のPCG、MSX2イース1のタイトルグラフィックは対応するツールを用意する時間も(おそらく予算も)なかったので、メーカーが本体にオマケで付けるエディターを使う事になって閉口しました。
特にシャープのPCGエディターは、マウス環境に慣れ切って堕落していた事もあってテンキー操作等に暴れたくなりました。

新井さん

新井さんへの質問

■ザナドゥの隠しネームなど、解析しないと分からないような隠しフィーチャーはファルコムさんやメーカーから情報提供があったのでしょうか、それともユーザーやスタッフの解析だけだったのでしょうか?
【答え】
ザナドゥの隠しネームですが、編集部で解析はしていません。読者からの投稿にあったかもしれませんが、掲載した記憶はありません(記憶がないだけで、掲載しているかもしれませんが。)
日本ファルコムさんからは、いくつかの隠しネームを提供いただきました。画面写真を撮るためにパラメータMAXの隠しネームを使った記憶はありますが、隠しネームの一覧を掲載した覚えはないです。
アイテムショップなどの隠しフィーチャーはファルコムから聞いた情報ではないです。新井の部下がザナドゥをプレイして、たまたま見つけているとか、読者からの投稿を検証していたことはあったかもしれません。

ゲーム保存協会 副理事長 福田