ゲーム保存協会 Game Preservation Society

ハミングバードソフトの幻の1本『リキャプチャー<奪還>』の保存に成功

PCゲームに関しては全部で50本にも満たない数しか持っておらず、ハードの改造はおろかBASICですら怪しいこの私がこうして筆を取らせて頂いたのも、理事長であるジョゼフさんとハミングバードソフトのアドベンチャーゲームで繋がったご縁があったからです。

私はとにかくゲームが大好きなのが取り柄ですので、なんとしても しっかり残して後世に伝えていきたいと考えております。そんな訳 で今回はゲーム保存協会でハミングバードソフトから発売されたFM-8/7/77用ゲームソフト『リキャプチャー<奪還>』の保存に成功しましたので、記事にさせて頂きます。

■ハミングバードソフトとは

ハミングバードソフトといえば『ロードス島戦記』や少し古くて『ラプラスの魔』といったRPGに強いメーカーだというイメージをお持ちではないでしょうか。確かにその側面もありますが 、日本で初めてある程度の水準を保ったアドベンチャーゲームを発売したメーカーでもあります。第一作目は FM -8用5インチディスクにて1983年に 発売された『ザ・パームス』(定価11,000円)です。

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従来のアドベンチャーゲームはマイクロキャビンの『ミステリーハウス』など密室空間を舞台にしていました。そんな中『ザ・パームス』は湘南海岸をイメージさせる街並み、海底、海底都市スムウパと外へ外へとゲームが展開されます。そしてグラフィックには当時としては画期的なカラー描写が行われていました 。本作は1983年1月とまだパソコンゲームという市場が未成熟な時期に発売され、国産ゲームの品質を大いに引き上げました。

■『リキャプチャー』とは

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『リキャプチャー』は1984年に「ハミングバード・別ベンチャー#1」(定価9,800円、85年に5,800円へと値下げ)というシリーズの第一弾として 発売されました。別ベンチャーと銘打たれているだけあり、今までメルヘンチックだった同社のアドベンチャーゲームとは方向性が異なっています。

主人公はフライ製薬の開発マンであり「100%Perfectな男の避妊薬」(マニュアルより)の開発に青春を賭けた若者です。そして主人公は遂に男性用避妊薬「KONDOH-MUYO」の開発に成功するのです。しかし黙っていないのはライバル会社であるモスキート製薬、なんと完成祝賀会で酩酊している主人公から「KONDOH-MUYO」の開発ファイルを盗んでしまいました。さあそうなると大変、今日は記者会見の日です。会見開始の午後4時30分までに会社に戻らないとフライ製薬の未来はありません。「 君は主人公となって開発ファイルをリキャプチャー(奪還)するのだ!」という ストーリーです。この顛末はアメコミタッチでマニュアルに描かれていますので、手に取る機会がありましたら 一度読んでみてください。

■豊富な付属品の数々

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1984年のパソコンゲームといえば少しデザインに凝りはじめた箱と簡素なマニュアルというものが 標準的でした。しかし本作は、ダリ風のパッケージ、アメコミタッチのマニュアル、製薬会社を舞台をイメージした薬袋風のケース、そして「これはボール紙です」と書かれたボール紙が付属するといった、凝った作りでした。 Apple][等で発売されていたインフォコム社のテキストアドベンチャーにもは、色々な付属品があるのでそれに倣ったのではないかと思います。ハドソンソフトの『暗闇の視点 バニーガール殺人事件』(1986年)には土が入っていましたね。

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リキャプチャー 付属品

■ストーリー

細部まで紹介するとゲームの魅力が失われてしまいますので、 各エリアを何枚かの写真を交え軽くご紹介致します。

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プレイヤーの勤務先であるフライ製薬です。こういった軽いテキストでゲームが展開されるので
楽しく進められますね。経理課、実験室には寄りましょう。また普通は対応しないF***、BAKA、AHOといった単語を入れると専用のイラストが出てゲームオーバーになります。一度は試してみるのもいいかもしれません。

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社員用バスに乗るとオハツ駅前へと移動します。降りて早々、ピンサロの呼び込みが出てきます。今まで上品だったハミングバードのアドベンチャーですが、今作は全体的に下ネタに走っているのが特徴です。 この街にはドラッグストアとデパートがあり、買い物上手でないとこの先で非常に苦労することになります。

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オハツ駅から電車に乗りトクベー駅へと向かいます。なんとこの街にはハミングバードショップがあり中には一人スタッフがいます。このゲームは受け付ける単語が多く、ディスカウントストアの前でハミングバードショップを見ると別ベンチャー第二弾の予告まで出てきます。この街も買い物する物が多く、また「会話をすること」で得る物もあり アドベンチャーゲームらしくなってきます。

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続いてはモスキート製薬がある最寄り駅、チカマツ駅です。ここからモスキート製薬へ進入するには二通りありますので、片方でクリアされた方はもう片方をお試し下さい。(ヒントブックに載っていた方法は結構気付きにくいです。)

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モスキート製薬の2階です。このモスキート製薬では大きな目的が2つあり、一つが社員証、そしてもう一つがKONDOH-MUYOのファイルの奪還です。2階では最初の課題である社員証に関しての謎解きが必要となります。会議室に横切ったモノからの機転が大事です。

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3階と踊り場がモスキート製薬後半の舞台となります。トクベー駅の商店街で買ったアイテムを活用させる時が来ました。ここで気をつけたいのが、実験室にあるファイルで、これは真っ赤な偽物です。
ただしこれを活用させないと例のファイル(名称は「HONTO-FILE」!)が手に入りません。

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ファイルを奪還したからといってゲームが終了する訳ではなく、このファイルをフライ製薬で待っている課長の元へ届ける必要があります。ただ一筋縄ではいかないのがハミングバードアドベンチャー、移動に使う乗り物を間違えるとゲームオーバーになるトラップを仕掛けています。また最初の頃で忘れている方も多いだろうピンサロの呼び込みが行く手を阻みます。ここが最後の機転の使いドコロですので、手元の持ち物と見比べつつ切り抜けて下さい。

■ヒントブック

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ゲーム中に HINT と入れると出てくる「リキャプチャーヒントブック」(全18ページ、別売1000円)ですが、この度保存協会も入手いたしました。 マニュアルと同じタッチでゲームの展開が最初から最後まで描写されていますので、これさえ読めばゲームが問題なく解けるでしょう。

今回紹介した『リキャプチャー』は83年から84年と非常に短い時期にブームだったコマンド入力式アドベンチャーです。コマンド入力式アドベンチャーゲームは自分で「何を」「どうするか」をカタカナか英語(!)で入れなければなりません。更には受け付ける単語が非常に限られているので「デキマセン」と冷淡な言葉を返された方々も多いのではないでしょうか。

ただ必要な単語が当てづらいだけに悩んでいたシーンでピッタリの単語を当てた時の感動は凄く、その後どんどんと画面とストーリーが展開していく瞬間は麻薬的な快楽があります。これはコマンド選択式のアドベンチャーには無い魅力であり、失われたゲームのジャンルです。

本協会では今作以外にも歴史に埋もれてしまった名作など「現存する全てのゲームソフト」を保存出来るよう、日々努力 をしております。皆様のご協力をお待ちしております。

ゲーム保存協会 駒林

※パッケージやゲーム画像などの著作権は著作者に帰属します。

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Miraikan Gamepres

企画展GAME ON特別フォーラム「どう残すか~技術と体験のアーカイブ」

初夏の風もさわやかな今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
本日は、来る5月20日金曜日に開催される日本科学未来館「GAME ON」特別フォーラム「どう残すか~技術と体験のアーカイブ」への出演告知をさせていただきます。
このイベントは現在同館で開催中の企画展GAME ONに付随する催しです。
なぜゲームを残す必要があるのか、どうやって残せばよいのか、というゲーム保存の基本問題と向き合うフォーラムで、現在この国で行われているゲーム保存の状況を確認する機会となります。
パネリストは現在、ゲーム保存活動に関わる代表者が揃い、ゲーム研究、そして保存についての意見交換がなされる予定です。

【出演者】
上村雅之(立命館大学 映像学部 客員教授/ゲーム研究センター センター長)
桶田大介(弁護士/マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟アドバイザー)
辻哲朗(日本ゲーム博物館 館長)
中村伊知哉(CiP協議会 理事長)
細井浩一(立命館大学 映像学部/ゲーム研究センター 教授)
柳与志夫(東京大学大学院情報学環 特任教授)
ルドン・ジョゼフ(NPO法人ゲーム保存協会 理事長)

ゲーム保存の難しさ、問題点など第一線で動く研究者らの声を直接聞ける貴重な機会です。
文化としての地位の低さや資料散逸の状況から「現代の浮世絵」ともいえるゲーム、この魅力的な文化財の未来を知るイベントです。

開催日時2016年5月20日(金)14:00~16:00 (受付・開場:13:30~)
開催場所日本科学未来館 7階 イノベーションホール
参加費:無料
お申し込み:必要(定員50人まで)

フォーラム詳細は以下のリンクより:
http://www.miraikan.jst.go.jp/event/1604141619827.html

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レトロゲームアラカルト@沼津 報告/資料公開

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2016年4月16日ー17日、沼津で開催されたイベント「レトロゲーム・アラカルト」にて、ゲーム保存協会理事長ルドンと理事福田が講演を行いました。
豪華なゲストを集めたレトロゲーム関連イベントの中、理事福田による「ゲームプレイの保存企画」、そして理事長ルドンによる「データイーストの歴史:アーケード黎明期の前衛家」の2講演を各1時間半かけ発表しました。

土曜日に行われた福田によるゲームプレイの保存についての発表は、そもそもなぜゲームのプレイを保存する必要があるのかという根本的なところから丁寧に説明。
ゲームでも保存の大切さを訴える人は徐々に増えてきていますが、福田は遊び方が残されないと何が問題になるのかを実例も紹介しながら解説しており、改めて保存の意義を考え直す時間が持てたと思います。
保存と一言に言っても、単なるプレイ動画の保存では残されない大量の情報があります。本当の「プレイ記録」の保存とは何なのか、その重要性を説明した上で、福田を中心にゲーム保存協会が編み出した完全なプレイ記録保存の新しいメソッドを発表。会場では実際のアーケード基板も出して新方式によるプレイ記録のデモンストレーションも行いました。より完璧な保存を求めるゲーム保存協会の活動クオリティを肌で感じる90分だったのではないでしょうか。

日曜日のルドンによるデータイーストの発表は、この数年ゲーム保存協会が力を入れていたデコカセ保存の成果の報告でした。
データイースト社の個性的な戦略の数々と、劣化の早いデコカセの保存作業の難しさを説明。ゲームの歴史の中でも異彩を放つデータイーストという会社の面白さが伝わる内容だったと思います。
講演では今回、ゲーム保存協会が救い出した、デコカセ全タイトルを実際のゲーム画面なども含め順に紹介。これまで知られていなかった各作品の特徴、そして革新的な部分など改めて整理して発表しました。
ゲーム保存協会がやらなければ現代によみがえることもなかった個性的な作品の数々。今回は会場で小カセ大カセと呼ばれる2種の異なるデコカセシステムの起動ローディングも行い、1980年のテクノロジーを間近でご覧いただく機会になったかと思います。

週末とはいえ、お忙しい中たくさんの方々が聴講に訪れ、会場も大変盛り上がっていたと思います。
ゲームの歴史を飾るビッグネームが集うシンポジウムにおいて、ゲーム保存協会の講演にお越しいただいた皆様には、本当に心より感謝申し上げます。
私たちにとっては、日ごろゲーム保存協会が行っている活動がどういった形で成果を生んでいるのか説明する機会でしたが、少しでも多くの方に、ゲーム研究と保存活動の必要性、またその魅力をお伝えできていれば幸いです。
ご参加ご協力いただきました皆様、また日ごろゲーム保存協会の活動にご支援ご声援くださっている皆様、どうもありがとうございます。
改めましてこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

プレゼン資料:「データイーストの歴史:アーケード黎明期の前衛家」(15.6MB)

「データイーストの歴史:アーケード黎明期の前衛家」(15.6MB)

「データイーストの歴史:アーケード黎明期の前衛家」(15.6MB)