【GPS Newsバックナンバー】アーケードゲームプレイの保存:1つの提案

※本記事はゲーム保存協会の過去の活動を知ってもらうことを目的とし、当時そのままの内容で掲載しています。
完成した記録用基板やプレイ保存などは、ニュースレターvol.16にて最新情報をご覧ください。

 

【2015年11月発行 GPS News vol.4掲載】

ゲーム保存協会ではコンシューマゲームや国産のレトロPCゲームと同様に、アーケードゲームの保存研究も行っています。
2012年にはデコカセットシステムの保存・修理などのノウハウを確立させ、これまでに現存するタイトルのすべてを保存し、30年以上前のタイトルを現在でもプレイすることが可能になりました。このような活動を通じ、コレクターの方のみならず、当時のスコアラーの方々とも交流する機会に恵まれるようになりました。保存や修理が可能となった過去の
ゲームを実際にプレイしてみると、そのプレイ方法も独特なものもあり、攻略法も情報が失われてしまっているものが多くあります。それらは当時プレイされていた方には当たり前のようなテクニックであっても、数十年という時間の中では、忘れられてしまい、再現することも困難でした。

ゲームを保存していく活動と合わせ、当時のプレイヤーでしかわからないプレイ方法やテクニックを残していくことも、また大切なゲーム保存の一つの側面と考えられます。
このことから、ゲーム保存協会ではスコアラーの方のプレイを動画保存する活動も開始しました。動画としての保存のクオリティはかなり高く、当時のスコアラーのプレイは目を奪われるものです。しかしプレイヤーがどのようにレバーやボタン操作で行っているのか保存することは困難でした。当初は操作中の手元を別のカメラなどで撮影することも考えられましたが、細かい操作などを完全に動画として残すことは難しいということがわかりました。なんとかしてその情報を残したいという思いから、専用のデバイスを考案することとしました。複数のアーケードゲーム作成やゲームの移植作業に携わっておられる方より情報をいただき、トライアンドエラーを繰り返しながら作成を行いました。

作成したプロトタイプのボード

まず第一段階として、動画と完全に同期するレバーやボタン操作の情報保存を行うことを目的にしました。
問題になったのは、どのようなタイミングで映像と操作情報保存の同期を行うかということでしたが、これは映像信号が開始される(実際は同期信号ですが)電源投入からとしました。このために電源のコントロールを行う必要があり、様々なパーツ選定を行う必要がありましたが、これは比較的容易に完成しました。
画像の同期と合わせることは出来ましたが、次に目標にしたものは、全く同じ情報をアーケード基板へ入力することで、全く同じゲーム進行となるようなものへの改良でした。それが可能であれば、万が一動画が消滅したり、プレイ情報が失われても、ゲームが存在する限りは何度でも再現可能です。また同じゲーム基板を用意すれば、目の前でその動作を確認することもできますし、エミュレータを作成する際に完全な同じ反応をするかのチェックにも使えます。更にスコアラーといえども常に完全なプレイを行うことは難しいでしょう。そのような場合に途中からやり直すことも可能になります。

動作確認に用いたコナミの「パロディウスだ!」の基板

しかし、この改良はかなり困難でした。(そして現状でも100%完全なものは理論的に不可能かもしれません。)まず実際のアーケード基板はどのようにボタン入力などを処理しているか?ということを検討しました。複数の基板を検討して見た結果、入力のノイズ処理や実際の入力タイミングは基板によってすべて異なっていました。また実際に操作するレバーやボタンによっても、操作した時の反応は一つひとつが異なっており、同じ型番のも
のであっても劣化によって、反応やノイズがかなり異なっていました。これらのことから、可能な限り操作の違和感を感じさせない範囲でノイズ除去を行ってしまうことと、可能な限り遅延なく入力情報を所得することに改良を重ね、プロトタイプとして完成を見ました。
プロトタイプは2015年7月25日に開催させていただいた2014年度の活動報告とイベントで発表しました。

現在は更に改良を重ね、2人プレイでの格闘ゲームなど2レバー6ボタンまでの拡張、アナログ入力やトラックボール、パドルコントローラなどへの対応など研究を行っています。更にはこれを応用して、様々なコンシューマ機にも対応可能か検討しています。近い将来にこれらの情報共有などが可能となり、より詳しいゲーム動作の研究やスーパープレイの保存、さらに新しいゲーム鑑賞方法の一助となるべく活動しています。
今後とも、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

ゲーム保存協会 副理事長 福田 卓也

文化庁アーカイブ推進事業 2021年度ご報告・ニュースレターvol.17発行のお知らせ

日頃よりゲーム保存協会をご支援いただき、誠にありがとうございます。

ニュースレター 最新号GPS News vol.17を発行いたしました。
今回は、2021年度・文化庁メディア芸術アーカイブ推進事業の活動報告をまとめています。
会員の方以外でもどなたでも、PDFダウンロードしてご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

ニュースレターVol.17 PDFのダウンロードはこちら

■活動期間:2021年6月7日~2022年2月28日

■活動内容:詳細はPDFをご覧ください。
①同梱資料の登録
②データベースへの情報入力
③パッケージの電子化
④書籍情報の目録作成
⑤半導体メモリの目録作成
⑥磁気媒体電子化情報の登録

文化庁メディア芸術データベース情報公開

昨年先行して公開されたゲーム保存協会のオンラインゲームカタログですが、ついに今年、文化庁のメディア芸術データベース(MADB)にゲーム保存協会の資料情報がリンクされました。
これまでの助成事業の中で、資料情報の整理と連携の準備を進めていましたが、データベース同士の連携が取れたことで、現在、PC-8801関連の1,511本のゲーム資料について、ゲーム保存協会の資料情報が反映した信ぴょう性の高いデータが表示されるようになっています。

文化庁・メディア芸術データベース(MADB)

日本のゲーム史やゲーム文化研究に必要な、信頼性の高い資料情報が残され、半永久的に情報を利活用できるようになるのは、大きな成果です。
まだ一部の情報連携のみですが、今後徐々に連携資料数を増やし、将来は双方のデータベースで最新情報のアップデートが行えるような仕組みを作れればと考えています。


【ゲーム保存協会のゲームカタログも公開中

ゲーム保存協会ゲームカタログ


皆さまにとって、ゲームの歴史を深めるきっかけとして、そして研究を助けるツールとして、有効活用いただければと思います。
ゲーム作品とその文化を100 年先の未来に残すため、今後とも活動を支えるご寄付・ご支援をお願いいたします。

工画堂スタジオ様からゲーム資料を寄贈いただきました

株式会社工画堂スタジオは、創業100年を超えた企業様。1916年に「図案と版画 谷工画堂」として創業して以来、グラフィックデザインの仕事を強みとしており、1982年発売のパソコンゲーム「Emmy」からゲームソフトを開発されています。
今年2021年11月には新作ゲーム「スターメロディー ユメミドリーマー」をリリースし、長年ゲーム制作をされております。

その工画堂スタジオ様から、2021年4月にゲームソフトやCDなど、258点をご寄贈いただきました。
この度は、JCGA(日本コンピューターゲーム協会)の幹事である、工画堂スタジオ 代表取締役社長・谷逸平様との交流をきっかけとし、当協会へのご支援という形で同社倉庫で保管されていたソフトをご寄贈いただく運びとなりました。

寄贈品は、国内Windows用PCゲームソフトをメインに、同社代表作である「シュヴァルツシルト」シリーズのレトロPCソフト、オーディオCDなども含まれます。
状態も素晴らしい未開封品で、工画堂スタジオ様が、作品に対して非常に愛着を持って自社で保管されていたことが窺えました。当協会への心温かいご支援、誠にありがとうございました。

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寄贈品の品々は未開封で非常に良い状態。グラフィック制作に強みがあり、ゲームソフト開発前から、株式会社タカラ(現 タカラトミー) 『人生ゲーム』をはじめ数多くのボードゲームの企画開発に携わっていた

寄贈いただいたものはPCソフト、コンシューマー用、書籍、CDなど、メディアの種類によって分類し、リスト化した上でそれぞれのメディアに応じたアーカイブ室で保管されます。またこの際に管理用QRコードをラベリングし、当協会の所蔵データベースに登録します。

ゲームアーカイブ室は、温度と湿度を365日管理し、日光や磁気など資料を痛める危険性のあるものを排除した専門ルーム。資料の劣化を抑えるため専用保存容器の中に資料を移し、現物を保管しています。さらに、劣化によるデータの完全消失を防ぐため、専用機器を使いフロッピーの中身をデジタル化し、2段階の保存作業で資料の消滅を防いでいます。

ゲーム保存協会は次世代にゲームを伝えて行ける設備で資料を保管されており、これも会員の皆さまからのご支援により賄われています。
貴重なゲーム・資料を未来に遺していくために、皆さまからのご支援をお待ちしております。
→サポーター登録はこちら

 

チャリティーオークション実施のお知らせ(予告)

「ゲーム保存協会 設立10周年イベント」の一環として近日中に、ヤフオク!にてチャリティーオークションを実施し、工画堂スタジオ様からご寄贈いただいた重複在庫をチャリティーオークションにて出品する予定です。オークションの売上金は保存活動の支援金として活用させていただきます。
12月中に出品を開始する予定ですが、詳細が決まり次第、ゲーム保存協会ホームページならびにSNSにて告知いたします。

ゲーム・資料の寄贈をご検討いただけませんか?

ゲームメーカーの企業様より、「自社のゲームを保管し、会社として残していきたいが、管理リソースもスペースもないため、どうしたらいいかわからない」という声をよくお聞きしております。ゲームを作る側である企業様からの信頼に応え、当協会でも1つでも多くのゲーム資料を保存していければと考えています。
寄贈をご検討されている企業様がいらっしゃいましたら、寄贈専用ページからぜひお問い合わせください。

→ゲーム・資料の寄贈のご案内はこちら

今後ともみなさまのご支援をよろしくお願いいたします。