ニュースレターvol.20発行のお知らせ

日頃より当協会をご支援いただき、誠にありがとうございます。

恒例の年末発行のサポーター会員向けニュースレターGPS News vol.20を発行しました。
今号は新しい名誉会員のご紹介、文化庁メディア芸術アーカイブ推進事業活動ご報告の記事をお届けします。

→【デジタル図書館】ニュースレターvol.20 PDFダウンロード

今回の事業報告ニュースレターは、どなたでもダウンロードいただけますので、ゲーム保存活動の支援に興味を持っている方はもちろん、知人などに当協会への活動をお伝えいただけますと幸いです。

ゲーム保存活動は、現在、ゲーム保存協会が全力で活動をしていますが、すでに保有している資料ですら、そのほとんどが時を経るごとに劣化により失われてしまいます。
補助金のおかげで活動できたものも数多くございますが、非常にご支援が不足している状況です。
長期的な活動継続のために、国や企業、個人一人ひとりの皆さまのご支援が少しでも必要です。
サポーター会員の皆様には年会費の口数更新の他、ご都合の良いタイミングでの都度寄付など、ご支援をご検討いただけますと幸いです。

引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。

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過去発行ニュースレター・限定資料の一般公開を拡大しました

ゲーム保存協会の活動をより広く皆様に知っていただくため、会員限定で公開されていた資料を一般向けに公開範囲を拡大いたしました。
今回はニュースレターのバックナンバーだけではなく、限定資料も公開。
「ゲーム保存学 最前線」は、理事長ルドンが2017年に参加したイベントにて限定配布したゲーム保存の学問、重要性を語った全15頁の小冊子で、大きな反響がありました。

■公開中の資料
【ニュースレター】
・日本語ニュースレター 13~18号(2020年度春~2021年事業報告)
・英語ニュースレター 4~6号(2019~2021年度)

【限定資料(冊子)】
・「ゲーム保存学 最前線」(2017年・限定版)

デジタル図書館にてPDFダウンロードいただけますので、ぜひお読みください。

→デジタル図書館(一般公開)

100年先の未来へゲーム文化を遺すため、私たちの活動は、サポーターの皆さまから会費やご寄付で実現しております。国や企業からのサポートもまだ不足しており、一人でも多くの方からのご支援が必要です。
この機会に当協会のゲーム保存への活動を知っていただき、当協会への活動ご支援をご検討いただけますと幸いです。

FM音源夜話【GPS Newsバックナンバー】

※【2020年12月発行 GPS News vol.12掲載】本記事はゲーム保存協会の過去の活動を知ってもらうことを目的とし、当時の内容で掲載しています。

ゲーム音楽に多くの影響を与えた、ゲーム保存協会の名誉会員・古代祐三さんが当時使っていた「FM音源」とは一体どんなものだったのでしょう?当時を振り返りつつ、エッセイ形式でお届けします。


80年代のマイコンファンなら、みんな大好きエフエム音源。
FM音源は、音の三要素(音量、音程、音色)全てを再現できる画期的なシンセサイザーです。ジョン・チャウニング博士という人が論文にして、その筋のヤマハ社が実用化したスゴいもの。
何がスゴイかって、FM音源は、オペレータというサイン波発生器の別のサイン波をかけ合わせて、少ないパラメータで複雑で多彩な波形(音色)を作り出すことができる。得意不得意はもちろんあるけれど、ピアノ、ブラス、ストリングスからベース、ドラム、はたまた人の声っぽい音まで、様々な音を出すことができるのがスゴイ。

マイコン最初期(80年代初頭)はBEEPでピーという程度の音しか鳴らせなかったのが、矩形波が出せるPSGという音源チップが登場して、音量や音程が自由に出せるようになったけれど、どれも同じ音色でした。同じ音程を同時に鳴らすと波形が打ち消されて音が消えちゃったりもするしね。
FM音源は「音色を作れる、扱える」というのが画期的だったのです。
音色が扱えると、同じメロディーでも音楽に格段に変化がつけられますね。ピコピコ音とは違うぜヘイヘイ。

FM音源は最初はシンセで使われていました。有名な初音ミクのデザインの元になったYAMAHA DX7もその一つで、80年代の楽曲によく使われています。
シンセでは小さい液晶画面でボタンをカチカチ押して音色をエディットするのがすんごく大変なので、YAMAHAさんはMSXと連携して音色をいじれるシステムとか出していました。
アーケードゲームなどでもFM音源チップが使われたものが増えていきました。最初期では海外のマーブルマッドネス(1984年)とか、国内だと戦場の狼(1985年)あたりが嚆矢らしいですね。
FM音源はパソコンにも搭載されるようになります。特に1985年1月発売のPC-8801mkIISRに標準搭載された影響が大きかったと思います。
SRが売れたのはFM音源と関係あるのか?というと、これはあるある!超あります!
88SRって、88mk2がとにかく遅い(画面表示のためにCPUが全力を出せない)という致命的な弱点を改善した上で、ALUによる高速描画とアナログRGB(512色中8色)とFM音源をくっつけたマシンです。

mk2 – 遅くなる要素 + すてきで3倍速いグラフィック + FM音源 = SRだいたいこんな感じです。

「サウンド・オブ・サイエンス」というキャッチコピー共にFM音源搭載をアピールしたPC-8801mk2SRのカタログ

 

ただ、ハードがいくらよくてもソフトがよくないとなかなか普及しないですよね。
ところがのっけからゲームアーツが「テグザー」(1985年)で度肝を抜いたわけです。
テグザーの音楽は五代響さん。
ご存じのとおり、プログラマでもあります。
SRも出たばかりの頃はFM音源の制御方法もこなれてなくて、内蔵音色とか耳に痛い音色とかが多く使われていたように思います。テグザーでもゲーム中はFM音源3音だけしか使ってない (SSGは効果音専用)なんですよね。
その後、颯爽と登場したのが「ザナドゥ・シナリオⅡ」と「ロマンシア」)!我らが古代祐三先生でした。特にロマンシアのオープニングは、それまでの88SRで流れていたものとは数次元違うレベルで奏でられる
ロック調の曲で、「やられた!」という印象が強かったです。
翌年発売された、「イース」と「ソーサリアン」ではSSGも効果的に使ってトドメを刺されます。もうみんなFM音源にメロメロさ!

ザナドゥ・シナリオⅡもロマンシアも、オープニングは別としてゲーム中はFM音源3音だけが使用されており、SSGはやっぱり効果音専用でした。
それがイースやソーサリアンで新しいドライバ(いわゆるMUCOM)をひっさげて、SSGも効果的に使うようになってきたのです。
FM音源でできることはサウンドドライバの作りこみ(機能)で大幅に変わります。より複雑な表現をするために、ドライバは次々に改良を加えられ、どんどん高機能になっていきます。
古代さんがそれまで使っていた同人のドライバSPLITを参考に、ファルコムで木屋さんが独自実装で作ったのがMUCOM。古代さん自身でもドライバを作るようになり、MUCOM88と名づけられ、徳間書店から市販化された時にMusic LALFと名前を変えて進化していきました。

さらに1987年10月に発売されたPC-8801FA/MAでは、より強化されたFM音源、YM2608(OPNA)が採用され、発音数が強化。ADPCMによるデジタルサンプリング(音声の録音・再生)も使用できるようになりました。これに合わせて従来機でも同等の音が出せるオプションボード、みんなだいすき「サウンドボードⅡ」が発売されました。

PC-8801FA/MAでより強化されたFM音源、YM2608(OPNA)

サウンドボードⅡも最初のうちは対応タイトルが少なくて、使い方もパッとしませんでした。サウンドドライバがこなれておらず、せっかくのADPCMも効果音がサンプリングで鳴るくらいの使われ方でした。
そこで我らが古代さんがまたまたブチかましてくれたのが「ザ・スキーム」!
ADPCMばりばりのドラムずんどこ、オケヒがジャン!ギターがギャーン!なわけです。
ノーマル(YM2203)音源だとサウンドボードⅡの曲とはまったく違う曲が鳴る、というのも珍しいところです。

この頃から、時代は徐々に16ビット機へと移行していき、またそれまで高価だったMIDIもDTMとして手頃な価格帯で扱えるようになっていきました。
MIDIの楽曲のクオリティには驚かされましたが、一方でMIDIに触れることで、逆にFM音源の音色の多彩さ、音色づくりの自由度などの魅力を再確認することができたように思います。

令和の時代になっても、現在でもFM音源の楽曲が好き!というファンは多いと思います。30年以上経っても古さを感じさせない魅力を持った音源であると言えましょう。

文:UME-3、編集・協力:ORION80・とまと