ゲーム保存協会 Game Preservation Society New Year

理事長から新年のご挨拶

2018年がはじまりました。皆さま旧年中は、当NPO法人の活動にひとかたならぬご支援ご協力を賜り、心より厚く御礼申し上げます。
 
お蔭様にて、2017年にはゲーム保存協会の悲願でもあったPCゲームソフトのアーカイブ室一般公開も成し遂げ、様々な理由で当協会所蔵のソフトを必要とする方に資料を閲覧いただいております。こうした事業を順調に続けられるのも皆様からのご理解ご協力があってこそ、ゲーム保存協会に参加くださっている皆様には感謝の言葉が尽きません。
 
一年の計は元旦にあり、とはよく申しますが、ゲーム保存協会でも気持ちを新たにして今後もゲームの歴史を残す様々な取り組みを続けてまいります。
 
今年度ゲーム保存協会でははじめて、文化庁からの助成を受けることになりました。ゲームの保存に関して動きの鈍かった日本ですが、そうした態度が少しずつ変わってきているのを感じます。今回の助成金は当協会のアーカイブをもとにした専門的データベースの作成事業に使われます。美術館や博物館が資料のカタログを作るように、当協会でも実際の資料を一つ一つ確認しながら「ネット情報のコピペ」ではなく現物資料をもとにしたデータベース作りを進めます。信頼性の高い情報が今後のゲーム研究の活性化に繋がればと願っております。
 
さらに、今年からあらたにゲーム保存協会の取扱い資料に「電子ゲーム」が加わります。80年代を中心に人々を魅了した電子ゲームですが、ゲーム&ウォッチなど誰もが一つはもっていた小さな携帯ゲーム機の数々は、研究が少なく資料収集、現物保存、資料のデータベース化ともに難易度の高い文化資料です。ゲーム保存協会ではこの電子ゲームの保存にも乗り出します。
 
毎年、夏に当協会が主催し開催しているイベントは、今年は8月に都内中心部にて、素晴らしいゲストをお招きして大きく開催する予定でございます。
 
本年も皆様のご厚情を支えに、スタッフ一同心新たに活動に誠意努力いたします。何卒、ご協力を賜り変わらぬご支援をお願い申し上げ、本年も皆さま方の益々のご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶を申し上げます。
 
NPO法人ゲーム保存協会
理事長
ルドン ジョゼフ

NPO法人ゲーム保存協会「ゲーム・アーカイブ」11月25日より公開

公共性の高い取り組みを目指して
 
2011年に設立したNPO法人ゲーム保存協会は、これまで、日本の貴重なゲーム資料を保存するため、公共性を保ち中立的な立場から活動を続けてきました。2015年には、所蔵する雑誌・書籍のうち、国会図書館などにも収蔵がない資料を含む2200冊を一般公開し、現在も資料を必要とする一般の利用者が無料で閲覧できる資料室として本部の一部を開放しています。
 
そして2017年、いよいよNPO法人ゲーム保存協会のゲームソフト・アーカイブの公開が決定しました。今週11月25日から、一般の利用者の受け入れを開始します。
 
ゲームはともすると商品として扱われ、利益と離れた真面目な研究や調査のために資料を閲覧したい人たちがいても、一般図書館や博物館に収蔵されていないなどの理由から、無料で資料を見られる場所がほとんどありません。ゲームの歴史を残すには、私利私欲から離れてゲーム保存の未来のために何が出来るか考え、行動する必要があります。NPO法人ゲーム保存協会は以前から、団体が所蔵するゲーム・ソフトを、それを必要とする多くの人と共有したいと考えてきました。
 
アーカイブの意義
 
現在、日本の各市町村には一般市民が必要に応じ自由に図書を閲覧できる図書館があります。古今東西の名画や歴史資料を展示する美術館や博物館では、多くの人に自由に資料を見てもらえるよう展示が行われ、こうした文化の共有が、次世代の文化活動を活性化し豊かな未来を作っていくと言われています。図書館や博物館のように、資料を蓄積し展示や貸し出しができるよう管理する機関を、アーカイブと呼びます。この社会に活きる全ての人が必要な時に必要な資料を手に取れることは、平等な社会を作るためにとても重要なことですが、ゲームに関しては、これまでそうしたアーカイブが存在しませんでした。レトロ・ゲームとも呼ばれる古いビデオ・ゲーム資料はオークションで高値で売られ、一般の図書館や資料館には所蔵がありません。これから発展していくであろうゲームの歴史研究や、これから作品を作る若いクリエイターを育てるには、一般の利用者が限られた予算でもゲーム資料を見ることのできる環境作りが大切です。
 
 
 
ゲーム保存協会の公開資料
 
誰もが活用できるゲーム・アーカイブを作る。これはNPO法人ゲーム保存協会の長年の夢でした。ただでさえ資料数が多く収集も修復も困難なゲームのアーカイブは、様々な困難を伴う壮大な計画ですが、今回はその記念すべき第一歩として、NPO法人本部にあるアーカイブの一部を公開します。
 
世界でもゲーム・ソフトを一般公開しているアーカイブ機関は非常に少なく、日本ではNPO法人ゲーム保存協会が初のアーカイブ機関となります。また、今回公開するのは80年代を中心に日本独自の発展を遂げたPCゲームソフトのアーカイブで、日本のPCソフトを閲覧可能なアーカイブは、NPO法人ゲーム保存協会が世界で唯一となります。
 
公開するのは本部アーカイブ室にある2万本以上の資料のうち、一般公開の準備ができている6300本のソフト。20世紀のPCゲームの歴史における重要な資料の数々が含まれています。
 
閲覧可能なアーカイブのリスト(ゲーム)
閲覧可能なアーカイブのリスト(雑誌)
 
 書斎
 
これからにつながる取り組み
 
今回の公開は、あくまでも最初の一歩でしかありません。アーカイブには今後も閲覧可能な資料を追加していく予定です。さらにこうした貴重な資料を劣化消失から守るための保存作業も続けていきます。このアーカイブをきっかけに、ゲーム研究のフィールドが広がること、そして、このアーカイブを活用して、次世代のクリエイティブな動きが起こることを願っています。今まで、手に取ってみることのできなかった古いゲームソフトを、実際に見たり、遊んだりできる活きたアーカイブとして、意義ある取り組みを続けていきたいと思いますので、この活動に意味があると感じる方には、ぜひNPO法人ゲーム保存協会のサポーターとして継続的なご支援ご協力をお願いいたします。
 
アーカイブの利用について
 
今回公開するNPO法人ゲーム保存協会のゲーム・アーカイブは、磁気媒体のソフトや壊れやすいハード機器など脆弱な資料を扱う専門のアーカイブです。多くの利用者に自由に資料を閲覧いただくことが理想ではありますが、資料の性質上、また管理運営の問題から、現在はいくつか利用の制限を設けています。
 
まず、資料の安全性を守るためにも、アーカイブを利用される方には出来る限り、NPO法人ゲーム保存協会へのサポーター登録をお願いしております。
 
次に、利用時には資料の閲覧理由と閲覧資料名を明示いただきます。特に閲覧理由には、記事執筆のための調査、論文資料としてなど、最終的に公開・発表されるプロジェクトをお尋ねしております。著作権など権利をお持ちの方からの各種お問い合わせもお受付けいたします。
 
実際の資料閲覧は、予約フォームからいくつか必要事項を送信いただいたのち、アーカイブ担当者との日程調整をお願いしております。その後、決められた日時に世田谷区の本部にて資料を閲覧いただきます。資料閲覧時に必要なハードウェアがある場合は、本部にてご用意いたします。
 
アーカイブ利用の予約フォーム
 
フロッピー 
 
なぜサポーターが必要なのか
 
世界初となるPCソフトのアーカイブは、国の図書館でも博物館でもなく、一般のNPO法人が運営しています。最近になってようやく、文化庁が主体となってゲームを文化として認めるよう動き出してはおりますが、ゲーム作品の閲覧ができる国立のアーカイブが実現するまでにはまだ長い時間がかかるでしょう。ゲームの場合、国のアーカイブ建設を待っていては、資料が散逸し収集は不可能となり、劣化が原因で貴重なデータも消滅してしまいます。
 
NPO法人ゲーム保存協会は、そうした悲劇から一つでも多くの資料を救い、一刻も早くゲームの歴史研究や価値の見直しといった文化活動が広がってほしいと考えています。そのために、NPOとして、アーカイブを開きました。
 
開かれたアーカイブの維持にはお金がかかります。日常的かつ恒常的に続く資料の管理、保存活動、予約者の受付など、ボランティアの労力だけでは賄えない部分も多々あります。公平な運営方針のもと、自由に資料閲覧ができる開かれたアーカイブを守るため、サポーターの皆様からのご支援が必要なのです。
 
サポーター登録することは、単にプロジェクトに資金的援助を行うというだけではありません。サポーター登録は、アーカイブを継続してほしいと願う声を送ることです。私たちは、いただいたご支援を、今後も資料を保存しアーカイブを大きく育ててほしいという皆さんの声として受け止め、真摯に取り組みを続けていきます。
 
まだご支援ご参加いただいていない方、ぜひご登録をお願いいたします。
 
サポーター登録へのページ

名プログラマー日高徹さんがゲーム保存協会の名誉会員に加わりました

2016年の夏の講演会で貴重なお話をたくさん聞かせていただいた日高徹さん。ホーンテッドケーブやマジックガーデンなどどこかメルヘンチックで温かなゲーム作品はもちろんのこと、80年代、PCゲームのクリエイターを目指していたたくさんの若者に夢と希望を与えた数々の著作で多くの人の記憶に残る名プログラマーです。
 
ゲーム保存協会では、ゲームソフトやハードウェア、雑誌や書籍などを収集するだけでなく、こうしたものを作っていた当時の第一線のクリエイターの皆さんとの輪も大切にしています。人がいなければ文化は生まれません。名作ゲームの裏には、必ず、一人一人のヒューマンドラマがあるのです。人の足跡を記録し、証言を記録することも大切なゲーム保存活動である、との思いから、ゲーム保存協会は今年度より「名誉会員」制度を設けました。
 
これまでゲーム保存協会には、保存活動を年会費によって一緒に支える「サポーター会員」、実際の保存作業や団体運営を行う「正会員」という2つの会員制度がありました。今年度新たにできた「名誉会員」は、過去の功績や現在のネームバリューで当協会の保存活動に貢献し、応援を送る特別な会員です。
 
この名誉会員の第1号として、今回、日高徹さんがご参加されました。
 
日高さんは現在、ゲーム・プログラマーのお仕事から引退されていますが、数年前より当協会理事のルドン、そして福田と個人的にやり取りを重ねていました。ゲーム保存協会の取り組みについてご説明し、時に温かなご声援やご意見をいただいてきた間柄です。今回は、こうした日ごろの親交、そしてゲーム保存協会の活動や団体運営に対するご信頼から、名誉会員へのご参加を快諾いただきました。
 
ゲーム保存協会を応援する日高徹さんからのメッセージや略歴は、こちらのページでご確認いただけます。
 

 
名誉会員 日高 徹
 
このように、過去ゲーム文化の歴史に貢献された方からの応援は、活動を続ける私たちにとってとても心強いものです。未来にゲームの歴史をしっかりと伝えていくために、一つでも多くの資料を残し、一人でも多くの方と協力して取り組みたいと考えているゲーム保存協会。取り組みへの参加方法は様々です。今後も名誉会員に参加いただける方が増えるよう、透明性を保った団体運営と真摯な活動展開を維持してまいります。
 
どうぞ、今後のゲーム保存協会の取り組みへのご注目、そしてご支援ご協力をよろしくお願いいたします。
 
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写真:Nicolas DATICHE